企業に求められる合理的配慮とは?障害者差別解消法に基づく7つの要素と具体例・相談窓口

企業に求められる合理的配慮とは?障害者差別解消法に基づく7つの要素と具体例・相談窓口

合理的配慮とは、障害のある人が何らかの対応を必要としている場合に行政や企業などが必要な対応を行うことです。

障害者への不当な差別的な扱いを禁止する障害者差別解消法の改正により、2024年から民間企業・事業者においても法的義務となりました。

障害のある人が障害のない人と同等の機会を提供するとともに、教育や就労などの社会生活においてさまざまな障壁を取り除くことが合理的配慮の趣旨です。

この記事では、障害者差別解消法に基づく合理的配慮とは何かについて具体的に説明します。

合理的配慮に重要な7つの要素と具体例、基盤となる障害者差別解消法についても解説しますので参考にしてください。

目次

合理的配慮とは

合理的配慮は、障害のある人が社会生活する上で生じるバリア(障壁)を取り除くために、行政や学校・企業などがその人それぞれの障害特性や状況に合わせて個別に必要かつ適切な修正・調整を行うことです。

障害者差別解消法の改正により、2024年4月から民間企業・事業者による対応が義務化されました。

合理的配慮ができた経緯

合理的配慮を簡単に説明すると、障害者が社会の中で出会う困りごとや障壁を取り除くための調整や変更といった配慮のことです。

2006年に国連で採択された、障害者権利条約(障害者の権利に関する条約)の条文で盛り込まれました。

障害者権利条約(障害者の権利に関する条約)では、合理的配慮を以下の通り述べています。

「合理的配慮」とは、障害者が他の者との平等を基礎として全ての人権及び基本的自由を享有し、又は行使することを確保するための必要かつ適当な変更及び調整であって、特定の場合において必要とされるものであり、かつ、均衡を失した又は過度の負担を課さないものをいう。

この考えは、障害者権利条約の実効性を持たせるための国内法でもある障害者差別解消法(障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律)においても取り入れられるようになりました。

そして2024年4月に改正障害者差別解消法が施行され、これまでの国・地方公共団体に加えて民間事業者においても合理的配慮が法的義務化されたわけです。

合理的配慮の概念

社会には年齢や性別、障害の有無など多様な人たちが暮らしているため、1人ひとりの得意なことや苦手なことの基準は人それぞれです。

この基準の違いによって、障害を理由にした差別的な扱いをすることや教育・就労の機会を与えないことは障害者差別解消法に基づいて禁止されています。

障害とはいっても種類はさまざまで個々によって症状や程度も異なるため、どのような障害がある人でも平等に社会生活を送れるようにさまざまな障壁を取り除くことが合理的配慮です。

例えば、障害があるために入学・採用試験を受けられない、目が悪いために配布された資料が読めない、耳が聞こえないために会議やセミナーなどの内容が理解できないなどの問題が起こらないよう対策が必要になります。

私たち1人ひとりが障害を正しく理解し、どういった配慮をしなければいけないのかを考えた行動が求められるのです。

参考:障害を理由とする差別の解消の推進(内閣府)

障害者差別解消法については、後述します。

合理的配慮の目的

合理的配慮の目的は、障害のある人の人権が障害のない人と同じように保障されるとともに、教育や就労などの社会生活において平等に参加できるようにすることです。

個々の障害特性や困りごとに合わせて、事業者や学校がその人に生じるバリアを取り除く工夫や対応をすることを意味します。

かわいそうだから特別扱いする・必要のない範囲まで過剰に優遇するといった慈善活動ではなく、人権の観点から権利を守るための対応です。

例えば、車いす利用者のためにスロープを設置したり聴覚障害者にテキストなどの視覚的な情報を提供したりすることが挙げられます。

これらの要素を総合的に判断し、障害のある人が他の人と平等に社会参加できる環境を整備することが合理的配慮の目的です。

合理的配慮のポイント

合理的配慮で抑えておくべきポイントは、以下の通りです。

何を行うか

合理的配慮とは何をするのかというと、障害のある人が社会参加するにあたって生じるバリア(障壁)を取り除くために個別の調整や対応が求められます。

いつ行うか

合理的配慮はいつするのかというと、障害のある人から困っている・障壁を取り除いてほしいといった意思が伝えられた時や必要性が明らかな時です。

どこまで行うか

合理的配慮はどこまで対応するのかというと、過重な負担にならない・無理のない範囲で対応できることを検討します。

必要なこと

合理的配慮に必要なことは、当事者との対話を重ねてお互いが納得できる解決策を導き出すことです。

目的障害のある人もない人も共に暮らせる共生社会の実現を目指す
考え方障害は個人の機能障害だけでなく社会にある障壁(バリア)によって生じるという社会モデルの考えに基づく
対応基準原則として障害のある人からバリアを取り除いてほしいという意思の表明があった際に対応が求められる
相互理解障害のある人と事業者・学校が対話を重ね共に解決策を導き出すことが重要

かわいそうだから助けるといった一方的な配慮ではなく、平等に権利を行使するための調整・対応が合理的配慮の本質です。

障害のある人に生じるバリアについては、下記記事をご参考ください。

合理的配慮に重要な7つの要素

合理的配慮には7つの要素があり、以下の通りです。

上記7つの要素は、障害者差別解消法に基づき教育機関や民間企業などで配慮を提供するための重要な指針となります。

(1)個々のニーズへの把握

障害の特性や状況は、1人ひとり異なります。

そのため、障害の状態や教育的ニーズなど個々の状況に応じて1人ひとりに合わせた具体的な配慮を行います。

(2)社会的障壁の除去

車いすや視覚障害者の歩行による段差や聴覚障害者に生じる情報不足など、あらゆる面からの社会的障壁をなくすことが必要です。

物理的なバリアと情報的なバリアを取り除くための具体的な変更・調整を行います。

物理的なバリアと情報的なバリアについては、下記記事もご参考ください。

(3)過重な負担でないこと

合理的配慮の実施に際し、事務・事業の目的や規模、費用、実施不可能などを考慮して過度な負担にならない範囲で行います。

例として車いす利用者に向けた全面バリアフリー化は金銭的にも事業者の負担になりますが、必要最小限の整備で対応することが可能です。

(4)本来業務への付随

大学の教育や事業といった本来の業務に付随する範囲での配慮であり、プライベートな領域には及ばない。

例えば大学の場合は教育、企業なら職務といった本来の目的を果たすための付随的な調整です。

(5)機会の平等

就労時間が十分に確保されない、昇進の機会が与えられなかったなどは不平等にあたるため、可能な限り多くの機会を与えて選択できる環境が必要です。

障害のある人が障害のない人と平等に権利を行使できるように、同等の機会を提供することを目指します。

(6)本質的な変更でないこと

機会平等が本質を変えるほどの内容である場合は、検討が必要です。

なお場合によっては、事務・事業の目的や内容、機能そのものを根本的に変更できるものではありません。

(7)本人の意向尊重

一方的な決定ではなく障害のある本人の意思や希望を尊重し、双方向の対話によって配慮の内容を決定することが重要です。

また障害を知られたくない人も多いため、他人からの視線に注意を払いながらプライバシーへの配慮も求められます。

合理的配慮の具体例

合理的配慮について具体的な配慮の例には、以下のようなものがあります。

最後のほうに障害特性による対応例も掲載しますので、参考にしてください。

物理的環境への配慮

  • 車いす利用者のために段差に携帯スロープを渡す
  • 高い場所に陳列された商品を代わりに取って渡す
  • 受付やレジのカウンターを車いすでも使いやすい高さにする

コミュニケーションや意思疎通への配慮

  • 筆談や手話、文字化などで対応する(聴覚障害がある人)
  • 文字の拡大や読み上げなどわかりやすい表現や方法で説明する(視覚障害がある人)
  • 絵や写真を用いてゆっくり説明する(知的障害がある人)

ルールや慣行の変更

  • 障害の特性に応じて休憩時間を柔軟に調整する
  • 読み書きが困難な場合にタブレットなどの補助具の使用を認める
  • 書類の代筆を行う

障害特性による対応例

合理的配慮は、障害の種類や特性によって対応が異なります。

例えば、車いす利用者には段差にスロープを設置したり高い場所にある品物を取ったりするなどです。

視覚障害のある人には、配布資料を点字付きにしたりタブレット端末などで拡大表示ができるようにしたりすることが挙げられます。

聴覚障害のある人には、筆談ボードを用意したり手話などによるコミュニケーションを図ったりするなどです。

知的・発達障害のある人にはイラストや図、カードで分かりやすく示したり静かな場所を用意したりすることが合理的配慮につながります。

他にも通院や体調などにより障害の特性に応じた出退勤時刻や休暇、休憩時間の調整などのルール・慣行の柔軟な変更を行うことも合理的配慮の1つです。

障害の種類によって生じるバリアについては、下記記事もご参考ください。

合理的配慮の基盤、障害者差別解消法について

合理的配慮の考えを取り入れた法律が、2016年4月1日に施行された障害者差別解消法です。

障害者差別解消法とは

障害者差別解消法は、すべての国民が障害の有無によって分け隔てられることなく、お互いの人格や個性を尊重し合いながら生きていける共生社会の実現を目指すために定められました。

国や地方公共団体、民間企業に対して障害を理由とした不当な差別的な取り扱いを禁止するものです。

また障害者から社会的障壁の除去の意思表明があった際に、過重な負担にならない範囲で必要かつ合理的な配慮をするように努めなくてはならないということが定められています。

障害者差別解消法における「障害者」とは、以下のように定義されています。

身体障害、知的障害、精神障害(発達障害を含む。)その他の心身の機能の障害(以下「障害」と総称する。)がある者であって、障害及び社会的障壁により継続的に日常生活又は社会生活に相当な制限を受ける状態にあるものをいう。

交通機関やレストランなどの商業施設などで、盲導犬や聴導犬といった補助犬の帯同を禁止できないことになっているのも障害者差別解消法の一例です。

障害者差別解消法の基本概要については、下記記事もご参考ください。

障害者差別に関する相談窓口「つなぐ窓口」

障害者差別解消法の改正により障害者や事業者、都道府県・市区町村などからの相談に対して、法令の説明や適切な相談窓口などにつなぐ役割を担う国の相談窓口について検討を進めることが明記されました。

これに伴い内閣府は障害者差別解消法に関する質問に回答すること、および障害を理由とする差別などに関する相談を自治体・各府省庁等の適切な相談窓口に円滑につなげるための調整・取次ぎを行うことを目的に「つなぐ窓口」を設置しています。

参考:障害者差別に関する相談窓口「つなぐ窓口」

障害を理由にサービスの提供を断られたり障害を理由に配慮を求めたら理由もなく断られたりといった障害者差別解消法に関する困りごとは、下記サイトから相談可能です。

これまでは電話・メールのみでしたが、手話リンクや相談フォームでの相談もできるようになっています。

参考:障害者差別に関する相談窓口「つなぐ窓口」専用サイト

合理的配慮は民間企業も対象に

合理的配慮というのは、働く環境の調整を通して社会にある障害を取り除き、より働きやすく1人ひとりが能力を発揮できるようサポートをすることです。

2024年4月より、国・地方公共団体だけでなく民間企業に対しても合理的配慮を提供することを義務づけることが定められました。

この障害者差別解消法の改正によって、障害があることを理由に差別的な扱いをする・教育や就業の機会を与えないことは禁止されています。

民間企業や事業者は障害者との対話を通じて、障害の症状や程度、障壁に応じてどのような配慮が必要なのか問題解決へ向けて行動することが重要です。

障害のある人が障害のない人と平等な労働機会を得られるよう、状況に応じた困りごとを改善する目的で個別の対応や支援を行います。

民間企業による障害者差別の窓口

障害者差別解消法第14条では、以下のように定められています。

国及び地方公共団体は、障害者及びその家族その他の関係者からの障害を理由とする差別に関する相談に的確に応ずるとともに、障害を理由とする差別に関する紛争の防止又は解決を図ることができるよう必要な体制の整備を図るものとする。

民間企業・事業者による障害者差別については、民間事業者が設置する既存の苦情解決体制や相談窓口を活用するなど当事者間での話し合いが重要です。

その上で当事者間での話し合いがうまくいかない、法律に関連する質問などは、各市区町村の相談窓口や厚生労働省の下記リンクを参考にしてください。

参考:職場での障害者差別の禁止と合理的配慮の提供(厚生労働省)

東京都内における相談窓口については、下記リンクも参考にしてください。

参考:障害を理由とする差別に関する相談窓口(東京都)

学校や企業にも求められる合理的配慮まとめ

合理的配慮は、障害者が自立して活動するための必要な支援であり障害のない人との不平等を是正するものです。

2024年4月より、障害者差別解消法において合理的配慮が義務化されました。

その大きなポイントは、国や地方自治体に限らず民間企業に対しても障害者への配慮が義務づけられたことです。

障害者から配慮の申し出があった際には、障害の症状や程度など個々の特性に応じてバリア(障壁)を取り除く対応が求められます。

障害の有無にかかわらず互いを尊重し合い、個々に応じた配慮でもって共生社会を実現していきましょう。

以下の記事では、障害者が社会に参加する上で生じる4種類のバリアと心のバリアフリーの重要性について解説していますので併せてお読みください。

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この記事を書いた人

つむぎのアバター つむぎ クリエイター

重度難聴で耳あな型補聴器を装用
聴覚障害者として身体障害者手帳3級を所有
本業・副業ともにWebを中心としたデザイン制作

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