
音が聞こえない・内容が聞き取れない難聴や聴覚障害のある人、そして高齢者。
多くは聞こえを補う補聴器を所有または装用していますが、中には補聴器を所有しているのに使わない人もいることをご存知でしょうか。
補聴器をつけたくない・嫌がる理由は人それぞれですが、とくに多いのが必要ない・効果に疑問がある・購入負担が大きいなどです。
しかし、補聴器を装用することで満足度が高まっていることも事実にあります。
この記事では、実態調査のデータから見る補聴器をつけたくない・嫌がる5つの理由について紹介します。
補聴器を所有・使用することによる意識の変化や満足度についても解説しますので、とくに補聴器をつけることに疑問がある人は参考にしてください。
実態調査から見る補聴器を使わない理由
JapanTrack 2022の実態調査によると補聴器を使わない理由で多いのが、装用が煩わしい・難聴がひどくない・経済的な余裕がないなどです。
中には、補聴器を所有しているのにもかかわらず装用しない人もいます。
ここでは実態調査のデータから、分類ごとに補聴器を使わない理由をまとめましたので参考にしてください。
補聴器を使わない理由のトップ10
補聴器を使わない理由としてもっとも多かった10項目は、以下の通りです。
1位:わずらわしい | 57% |
2位:難聴がそれほどひどくない | 40% |
3位:補聴器を利用しても元の聞こえは戻らない | 38% |
4位:補聴器を購入する経済的な余裕がない | 38% |
5位:補聴器は騒音下では役に立たない | 26% |
6位:ほとんどの場所でよく聞こえる | 24% |
7位:低音の人の声が聞きにくいだけ | 24% |
8位:補聴器を装用することが恥ずかしい | 25% |
9位:耳鳴りがあるから | 28% |
10位:高音の人の声が聞きにくいだけ | 20% |
補聴器を使わないトップ10以降の理由例
補聴器を使わない理由のトップ10項目以外で見られる一例は、以下の通りです。
補聴器をどこで購入したらよいかわからない |
まだ聴力検査を受けたことがない |
補聴器の形やデザインがよくない |
補聴器以外で購入したいものがある |
片耳は聞こえているから |
補聴器を使用したことがあるがよくなかった |
補聴器を使用している人の意見である |
補聴器販売店を信用していない |
難聴があることを公にしたくない |
耳鼻科医師の意見である |
感音性難聴であるから |
補聴器販売店の意見である |
かかりつけ医師の意見である |
家族の反対や社会的な偏見がある |
視力や手先に問題がある |
耳の手術が必要である |
手術をしたが補聴器は役に立たない |
補聴器を所有していても使わない理由のトップ10
補聴器を所有しているのに使わない・装用しない理由でもっとも多かった10項目は、以下の通りです。
難聴がそれほどひどくない |
低音の声が聞きにくいだけだから |
補聴器を使用したことがあるがよくなかった |
わずらわしい |
補聴器を使用しても元の聞こえに戻らない |
片耳が聞こえているから |
ほとんどの場所でよく聴くことができる |
補聴器は騒音下では役に立たないから |
高音の声が聞きにくいだけだから |
手術をしたが補聴器は役に立たない |
このようにネガティブな理由だけでなく、補聴器自体の性能に疑問があるといった声も見られます。
上記の理由を補聴器の性能や経済的な負担などに分けると、以下の5つになります。
- 補聴器を使う必要があるほど困っていない
- 補聴器の装着や手入れが面倒で煩わしい
- 補聴器の効果に対して疑問や不満がある
- 補聴器を使うことが恥ずかしく抵抗がある
- 補聴器が高額で費用負担が大きい
次項では、上記5つに分けられる主な理由に対する具体的な実態や内容を説明します。
補聴器をつけたくない・嫌がる5つの理由
前述の通り、難聴の人や高齢者が補聴器を使わない理由は大きく5つに分かれます。
補聴器をつけたくない・嫌がる理由として自覚症状がない・手入れが面倒・効果に疑問があるといったことが多く、主に以下の通りです。
難聴の自覚がない(補聴器が必要ない)
難聴や聴力低下は徐々に進行するため、本人に自覚症状が薄いことがあります。
とくに年齢を重ねるごとに症状が進む加齢性難聴や老人性難聴は、聞こえにくさに気づきにくいです。
日常会話に支障がない限りは、補聴器の必要性を感じない人もいます。
装着や手入れが面倒で煩わしい
補聴器は精密機器でもあり、装着や手入れを面倒に感じる人も多いです。
例えば耳かけ型補聴器は、イヤーモールドを耳あなに挿入しループ部分を耳の上にかけて本体を耳の後ろにぶら下げる煩わしさがあります。
耳あな型補聴器はコンパクトなサイズのため、落とさないように神経を使います。
近年の補聴器は充電式タイプや自動スイッチタイプなど使いやすい機種も登場していますが、耳に装着する機器でもあることから不快感がある人も多いです。
また補聴器は電池交換や充電が必要で、雨で濡れた時や湿気が蓄積した時は清掃など手入れが必要なことがあります。
効果に疑問や不満がある
補聴器は聴こえを補うツールであり、元の聞こえ方に戻すものではないため期待するほどの効果がないと感じることがあります。
また補聴器によっては、雑音が多い・音質が悪い・操作が難しいなどの不満を感じる人も多いです。
周囲の目を気にする
補聴器をつけていることを恥ずかしいことだと感じて、周囲に知られたくないと考える人も多いです。
難聴を恥や罪だと感じている場合もあり、補聴器を装着すると年寄りと思われることへの抵抗や差別的な態度をとられることを恐れる人もいます。
費用負担が大きい
補聴器は医療機器でもあることから、高性能な機種であるほど価格が高くなる傾向があります。
そのため費用負担が大きいと感じて、補聴器の購入を躊躇する人も多いです。
補聴器を所有・使用する人の意識変化
前述の通り、補聴器をつけたくない・嫌がる人の理由はさまざまです。
しかしJapanTrack 2022によると、補聴器を所有・使用している人と所有していない人の意識に大きな違いがあります。
補聴器を使用してからの満足度
補聴器を所有している人のうち、補聴器を使い始めてから生活の質が向上したり外出しやすくなったりしています。
内容 | はい | いいえ |
---|---|---|
生活の質が向上した | 97% | 3% |
外出に自信がもてる | 77% | 23% |
補聴器を所有している人の97%が、補聴器の使用により生活の質が改善したと答えています。
また補聴器を使用している人の77%が、補聴器を使うようになってから街中を安心して歩けるようになったという報告も多いです。
つまり、補聴器をつけることによる効果があるといえます。
補聴器をつけたくない人の理由に効果に疑問や不安がありますが、補聴器を使ってみないとわからない面が多いでしょう。
補聴器のおかげで改善したと思う側面
補聴器を所有・使用している人は、補聴器を使い始めてからどういった面で改善したのでしょうか。
安心感 | 48% |
会話のしやすさ | 47% |
自分自身の気持ち | 44% |
グループ活動への参加 | 35% |
精神的・感情的な安定 | 35% |
自信 | 35% |
家庭内での人間関係 | 33% |
仕事での成功 | 31% |
社会的活動 | 30% |
職場での人間関係 | 29% |
自立心 | 27% |
精神力・気力 | 27% |
肉体的な健康 | 23% |
補聴器のおかげでさまざまな側面に対してよい影響を与えており、とくに安心感や会話のしやすさ、自分自身の気持ちなどに改善が見られるという結果が多いです。
つまり補聴器を使うことで視野が広まり、行動力も増えているといえます。
補聴器の使用や難聴で嫌な思いをしたこと
では、補聴器を使用していることや難聴であることで嫌な思いをしたことがある人はいるのでしょうか。
補聴器を所有している人
補聴器を使用していることをからかわれたり仲間外れにされたことがあるか?
まったくない | 75% |
ほとんどない | 19% |
時々ある | 6% |
常にある | 0% |
補聴器を所有している人の75%は、補聴器を使用していることをからかわれたり仲間外れにされたりしたことがないと考えています。
補聴器を所有していない人
難聴者であることをからかわれたり仲間外れにされたことがあるか?
まったくない | 65% |
ほとんどない | 29% |
時々ある | 5% |
常にある | 2% |
補聴器を所有していない人が、難聴者であることをからかわれたり仲間外れにされたりしたことがないと答える人も多いです。
上記の結果により、補聴器を所有している人も所有していない人も補聴器を使用することや難聴者であることをからかわれたり仲間外れにされたりしたことがまったくない人が半数以上です。
つまり補聴器をつけたくない・嫌がる理由の1つにある周囲の目を気にする人は、偏見や思い込みによるものが大きいことがいえます。
補聴器購入における経済的な負担について
補聴器をつけたくない・嫌がる理由の1つに、経済的な負担があります。
補聴器の購入負担について知っている情報にも意識の違いがあり、以下の通りです。
補聴器の助成制度について
補聴器の購入にあたって、費用負担を軽減する公的な補助制度があるのをご存知でしょうか。
補聴器を所有している人
補聴器の購入にあたって公的補助を受けたか?
はい | 8% |
いいえ | 80% |
わからない | 12% |
補聴器を所有していない人
補聴器の購入にあたって公的補助を受けられる制度があることを知っているか?
はい | 8% |
いいえ | 86% |
わからない | 6% |
補聴器を所有している人のうち、障害者総合支援法または自治体独自の助成制度に基づく公的支給補助を受けている人は8%です。
初めての購入では知らないことも多いですが、次回以降は助成制度を活用できるか確認できるでしょう。
また、補聴器を所有していない人の8%しか支援・助成制度の存在を知りません。
聴力の程度など一定の条件がありますが、補聴器の助成制度があることを知っておくと購入負担を軽くできる可能性があることを覚えておきましょう。
補聴器の支援・助成制度については、別記事で紹介します。
補聴器には消費税がかからない
補聴器は、医療機器でもあることから実は非課税です。
しかし、補聴器の購入に消費税がかからないこと知っている人は少なくありません。
区分 | 知っている | 知らない |
---|---|---|
補聴器を所有している人 | 44% | 56% |
補聴器を所有していない人 | 7% | 93% |
合計 | 12% | 88% |
補聴器を所有している人は、まず購入をきっかけに消費税がかからないことを知ることが多いです。
しかし約半数の人が非課税であることを知らないのは、消費税込みの価格だと思っているのではないでしょうか。
筆者も何度か補聴器を買い替えていますが、補聴器に消費税がかかっていないことを知ったのはつい最近のことです。
一方で補聴器を所有していない人は、補聴器の販売店や専門店で実際に商品を見たり話を聞いたりしなければ補聴器が非課税であることを知らない人がほとんどだといえます。
補聴器を使用することの効果まとめ
補聴器をつけたくない・嫌がる人の理由として多いのが、難聴の自覚がない・装用が面倒であることなど人によってさまざまです。
中には補聴器の効果に疑問や不安を抱く人もいますが、所有している人の多くは補聴器を使い始めてから生活の質が上がり安心して外出ができるようになっています。
また補聴器は高額で手を出しにくい機器ですが、医療機器として非課税であり条件によっては障害者総合支援法や自治体独自の助成制度を活用して購入負担を軽減することが可能です。
もし難聴や聴力の低下を感じ始めたり、周囲から聞こえを指摘されたりしたら。
補聴器を所有している人が使い始めてからの意識変化や満足度を参考にして、耳鼻咽喉科や専門家で補聴器の装用が必要なのか相談しましょう。
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