
聞こえを補う補聴器を使うと難聴は悪化するのか。
その答えは「いいえ」です。
個々の聴力や聞こえの状態に合わせて適切に調整されていれば、補聴器が原因で難聴が進行したり聴力が低下したりすることはありません。
ただし不適切な調整や使い方をすれば、かえって難聴や聴力低下が進行することもあります。
この記事では、補聴器を装用することで難聴が悪化しない理由を解説します。
補聴器による難聴の悪化リスクについても説明しますので、とくに補聴器の購入を検討している人は最後までお読みいただけると幸いです。
補聴器が難聴を悪化させることはない理由
結論からいうと、補聴器を装用することが原因で難聴が悪化することは基本的にありません。
ではなぜ補聴器が難聴を悪化させることはないのか、その主な理由は以下の通りです。
フィッティング
フィッティングとは、補聴器の選択から試聴、調整までを行う全体プロセスです。
使う人の聴力データや生活環境などから最適な補聴器を選び、補聴器を実際に装着し聞こえにくい音域の補正や音量の調整などを行います。
最適な聞こえが得られるように必要に応じて調整を繰り返し行うフィッティングは、補聴器を安全に使用するための重要な作業です。
適切な調整
補聴器を使いやすくするための作業として前述のフィッティングと同じ意味ですが、調整はフィッティングの一部です。
補聴器を使い始めの時は、音がうるさく聞こえたり音量に問題がなくても特定の音質が強く感じたりすることがあります。
使う人の聴力に合わせて聞こえやすいように音の調整を行うことで、不快感をもたらすような過大音や不適切な音量によって耳に負担がかかることはありません。
管理医療機器
補聴器は、聞こえを補うために薬機法(旧・薬事法)で定められた医療機器です。
厚生労働省の認可を受けた管理医療機器であり、その有効性・安全性が保証されています。
また補聴器の販売店は営業所の届出・許可や管理者の設置など、厚生労働省が定める一定の基準をクリアすることが必要です。
補聴器における管理医療機器の位置づけについては、下記記事をご参考ください。

早期装用
難聴の症状を放置すると、認知症のリスクが高まるともいわれています。
そのため、早い段階で補聴器を使用することでコミュニケーションの円滑化や生活の質の向上につながります。
難聴を悪化させないための注意点
補聴器の効果を最大限に発揮するためには、専門家による適切なフィッティング(調整)をしっかりと行うことが大切です。
自己判断で補聴器を選んだり調整したりすることは避けてください。
また不適切な使い方をすると、かえって聞こえにくくなる場合があるため専門家とよく確認してください。
補聴器は適切に調整されていれば、難聴を悪化させることはありません。
むしろ早い段階から使用することで生活の質を向上させることが可能です。
補聴器を使い始めたことによる満足度については、下記記事をご参考ください。

補聴器による難聴の悪化リスク
前述の通り、補聴器は不適切な調整や使い方をするとかえって聞こえにくくなる場合があります。
補聴器の装用によって難聴が悪化するリスクは、主に以下の通りです。
不適切な調整
補聴器の調整が適切でなく、使う人の聞こえに合わない音量や周波数で設定されている場合は聴力を悪化させる可能性があります。
騒音環境での使用
騒音のある環境下で補聴器を使用すると、耳内が過度に刺激され聴力を悪化させる可能性があります。
騒音環境では音量を下げたり一時的に使用を止めたりするなど、補聴器の使用を控えるのがおすすめです。
定期的な聴力検査の不足
聴力は変化する可能性があるため、定期的に聴力検査を受けて補聴器の調整を見直すことが重要です。
悪化リスクへの注意点
補聴器の購入や調整は、耳鼻咽喉科医や補聴器販売店などの専門家と相談した上で個々の聴力に合ったものを選ぶことが重要です。
筆者は小学時代にポケット型、中学・高校時代に耳かけ型補聴器を装用していたことがあります。
ポケット型補聴器は片耳しかつけられないため仕方がないのですが、その流れもあり中学・高校時代も利き耳である右耳にのみ耳かけ型補聴器を装用していました。
当時の担当医師には左耳の聴力を生かす必要があるといわれていたのにもかかわらず、煩わしさと費用負担を考えると右耳で凌いでいたのです。
しかし高校時代も後半にくると、左耳の聴力が悪化し右耳に頼っていたためにバランスが崩れてしまっていました。
その後、左耳にも補聴器を装用することで右耳と同じ聴力になり聞こえのバランスがとれるようになっています。
片耳装用と両耳装用の違いについては、別記事で解説します。
補聴器による難聴悪化の可否まとめ
補聴器は購入したら終わりではなく、使う人の聴力に応じたフィッティング(調整)を必要とすることが前提です。
そのため、適切に調整された補聴器を使うことで難聴が悪化することはありません。
しかし適切に調整されず耳内に音が響くような状態で使い続ければ、補聴器が原因で難聴や聴力低下を悪化させるリスクが高まります。
難聴になり始めの人の中には、補聴器に頼ったらかえって耳が悪くなると購入を敬遠する人も多いです。
しかしJapanTrack 2022の調査報告では、補聴器を使い始めてから生活の質が向上した人が90%を超えています。
人は使わない機能は衰えてしまう傾向があり、入院などによって歩かないでいると歩く力が衰えてしまうのがわかりやすい例です。
個人差はあるものの聞こえない・聞こえにくいからといってそのままにしておくと、言葉を聞き分ける力は衰えてしまう恐れがあります。
そうなると補聴器をつけても声は聞こえるけど、何をいっているかわからないというような状態になってしまいます。
補聴器は、難聴により聞き取りにくくなった音や声を聞こえる音量や音質に増幅する医療機器です。
今ある聴力や聞こえを維持するためにも、難聴を感じ始めたら早い段階で耳鼻咽喉科での受診を行ってください。
以下の記事では、補聴器をつけたくない・嫌がる理由について紹介しています。
補聴器を使い始めてから生活の質が向上したり外出がしやすくなったりする調査結果も解説していますので併せてお読みください。

コメント