
難聴には伝音・感音・混合という部位によるもの、先天性や若年性といった発症時期によるものなど種類があります。
しかし中耳や外耳の外傷から難聴になることもあれば、若いうちから聴力低下が表れて次第に聴力を失っていく失聴もあります。
難聴というのは一般にどんな症状が表れるのか、聴力の低下を感じ始めたらどうなっていくのか。
難聴になる前兆や症状が進行することで生じる問題や弊害について紹介します。
難聴になる前兆・初期症状
難聴になる前兆として多いのは、音がこもって聞こえにくくなる、会話が理解しづらくなる、耳鳴り、耳の詰まり感、そして騒がしい環境での会話が難しくなるなどです。
またテレビの音量を上げがちになる、交流の場を避けるようになる、といった行動の変化も前兆として挙げられます。
難聴の初期症状は、突発性難聴と加齢性難聴によって異なります。
突発性難聴になる前兆
突発性難聴は、ある日突然、左右どちらか一方の耳の聞こえが悪くなる症状です。
突発性難聴の前兆となる主な症状は、以下の通りです。
- 片耳が突然聞こえにくくなる
- 耳が詰まった感じがする(耳の閉塞感)
- 音が二重に聞こえる(響きやエコーがかかる)
- 耳鳴りが続く
- めまいや吐き気がする、など
突発性難聴に気づく目安として突然片方の耳が聞こえにくくなり、耳鳴りや耳の閉塞感、めまい、吐き気を伴うことがあります。
何の前触れもなく片耳または両耳の聴力が低下するため、早期治療が重要です。
加齢性難聴になる前兆
加齢性難聴は、内耳の感覚細胞が減少し高音域から徐々に聞こえにくくなる症状です。
加齢性難聴の前兆となる主な症状は、以下の通りです。
- 高い音の聞き取りにくくなる
- 会話の聞き取りが難しくなる
- 雑音のある環境での会話が困難
- 小さい音は聞こえづらく大きい音はうるさく感じるリクルートメント現象
- 耳鳴り、など
加齢性難聴に気づく目安として家電製品や体温計などの電子音に気づきにくくなり、テレビの音量や話し声が大きくなるほか耳鳴りがすることもあります。
加齢性難聴は、40代から始まることもあり初期症状が軽度なために気づきにくい場合があります。
認知症のリスクも高まる可能性があるため、適切な治療を受けることが重要です。
難聴の症状には個人差があり、程度も人によってさまざまです。
初期症状に気づくのが遅れる場合もあるため、上記のような症状に気づいたら早めに耳鼻咽喉科を受診しましょう。
難聴や聴力低下が進行する前兆・症名
もともと難聴の人や聴覚障害者がさらに難聴・聴力低下が進行する前兆は、以下の通りです。
聞き返しや聞き間違いが多くなる
呼びかけても気づかないことが増える
会話することが億劫になる
聞き慣れている音が以前と違って聞こえる
音の歪みなどを感じる
難聴が徐々に進行すると、聴力が完全に戻らなくなるリスクが高まるため注意が必要です。
症状の例として、最初は耳鳴りや耳が詰まったような閉塞感があります。
次第に高音域など特定の言葉の聞き取りにくくなり、会話が聞き取りにくくなったり周囲の音が小さく聞こえたりするなど日常的な会話や音に不満を感じるようになる傾向も多いです。
難聴が進行し徐々に耳が聞こえなくなる病気には、加齢性難聴や慢性中耳炎、耳硬化症、メニエール病などがあります。
加齢性難聴
加齢性難聴は、年を重ねるとともに内耳の感覚細胞が減少し高音域から徐々に聞こえにくくなる症状です。
慢性中耳炎
慢性中耳炎は、中耳の炎症による膿や液だれが起こることで耳が遠くなる症状です。
耳硬化症
耳硬化症は、耳小骨の1つであるアブミ骨が動きにくくなり、徐々に難聴を引き起こす症状です。
メニエール病
メニエール病は、内耳のリンパ液が増加し片耳の難聴や回転性のめまい、耳鳴りを繰り返す症状です。
メニエール病が進行する時は低音障害が長引き、ある時から高音障害を伴って数年後には全音域の障害へと進行しやすくなります。
聴神経腫瘍
聴神経腫瘍(ちょうしんけいしゅよう)は、聴神経を包む細胞にできる良性の脳腫瘍です。
症状が徐々に進行する場合と急に進行する場合があり、腫瘍が大きくなるとめまいや顔面神経麻痺が現れることがあります。
他にも鼓膜の一部が中耳に入り込むことで細菌に感染して周囲の骨を壊す真珠腫性中耳炎、40歳未満の若さで発症し両耳ともに難聴が進行する若年発症型両側性感音難聴などさまざまな症状から難聴が進行することがあります。
いつもと聞こえ方が違うなど違和感があった場合は、早めに耳鼻咽喉科で受診してください。
難聴が進行することで生じる問題・弊害
難聴が進行することで生じる問題として、どんな弊害があるのでしょうか。
- 耳鳴り
- めまい
- 耳の閉塞感
- 幻聴のような音
- 平衡感覚・ふらつき
耳鳴り
耳鳴りは、周囲で実際に音が鳴っていないにもかかわらず、耳の中でさまざまな音が聞こえる状態です。
急な気圧の変化などで一時的な耳鳴りは誰にでも起こることがあるため心配することはありませんが、症状が長引き日常生活に支障をきたすような場合には注意する必要があります。
耳鳴りには個人差があり、高音から低音まで音の種類がいくつかあります。
例えば「キーン」「ピー」といった高音、「ザー」「ジー」といった低音、そして脈拍と合わせて聞こえる「ザーザー」「ドクドク」といった音などさまざまです。
耳鳴りがひどくなると、家電製品の電子音に気づかなかったり相手の話し声が聞き取りづらくなったりすることが増えます。
筆者は難聴が進行するにつれ、ピーピー・ザーザーといった単音から火災報知器が鳴っているのかと思うほどの複雑な音が耳内に響いています。
耳鳴りのする音域によって症名が判明することがあるため、耳鳴りの症状が続く場合は早めに耳鼻咽喉科での診察をおすすめします。
めまい
めまいは、周囲が回って見えたり物が揺れ動いて見えたり、目の前が真っ暗になったりするなどの状態です。
難聴を伴うめまいは、内耳の異常が原因で起こることが多く内耳のリンパ液の異常や炎症、血流障害などさまざまな要因で引き起こされます。
平衡感覚を司る三半規管や前庭神経に異常が生じるとめまいが起き、難聴は蝸牛という音を感知する器官に異常が生じると起こります。
とくにメニエール病ではめまいと難聴が同時に発生することが特徴で、内耳の炎症や血流障害が原因で起こる突発性難聴もめまいと難聴が一緒に現れます。
筆者の場合はめまいは感じませんが、後述する平衡感覚によるふらつきはあるためめまいと錯覚しがちです。
耳の閉塞感
耳の閉塞感は、耳が詰まったような感じや耳の中が塞がっているような感覚がする状態です。
わかりやすく例えると、耳の中に水が入ったような感覚や新幹線でトンネルに入った時の詰まった感覚と似ています。
耳の閉塞感にもさまざまな原因があり、難聴を伴う場合はメニエール病や突発性難聴、聴神経腫瘍など内耳による原因が多いです。
単に耳垢の詰まりや外耳炎、異物混入など外耳によるもの、風邪や気圧の変化によるものなど原因が比較的軽い場合もあります。
耳垢の詰まりなら耳鼻科で除去してもらうと改善しますが、中耳炎であれば抗生剤やステロイド剤を使用する治療になるため早めの診察がおすすめです。
風邪や気圧の変化による空気が詰まったような感覚がする場合は、鼻をつまんだ状態で勢いよく鼻息を吐き出すようにすると改善しますので試してみてください。
幻聴のような音
難聴による幻聴は、耳の中で常にベルやブザーのような音がしたり響きやエコーがかかったように音が二重に聞こえたりする現象です。
耳鳴りが進行したような状態で、本来聞こえなかった音を補おうとしたり聴覚系の機能に異常が生じたりすることで幻聴が起こる可能性があります。
筆者も高音域と低音域が混ざった幻聴があり、音楽(歌)がメドレー状態で切れ目なく続く症状と向き合っています。
平衡感覚・ふらつき
難聴が進行すると、平衡感覚の異常を引き起こすことが多いです。
三半規管が弱くなると、ふらつきや乗り物酔いなどに似た症状を引き起こす可能性があります。
筆者も難聴が進行していく都度、とくに狭い道路や下り階段ではバランス感覚がとりづらいです。
難聴かどうかを確かめる方法
難聴かどうかを確かめる方法としては、主に以下のような状態や症状です。
- 呼びかけに気づかないことがある
- 聞き間違いが多い
- 会話中によく聞き返す
- 話す声が大きいといわれるようになった
- 生活音がいつもと同じ音量なのに急に聞こえにくくなった
- 起きたら聞こえづらくなっていた
- 夕方になると聞こえにくくなる
- 耳の詰まった感じや耳鳴りが続いている
- めまいがする時がある
- 睡眠不足や疲労がたまっている
- 精神的なストレスを感じている
- 大きな音がする環境にいる時間が長い
ただし難聴や聴力低下は、耳内の異常とは限らず別の原因も考えられます。
難聴の自覚がなくても目に見える症状ではないため、自覚しにくいこともあり難聴であることを認めたくない気持ちもあるでしょう。
上記はあくまで参考として、いつもと違う異常を感じた場合は早めに耳鼻咽喉科での診察を受けましょう。
難聴の前兆や進行に伴う問題まとめ
難聴には、部位・発症時期・程度による種類があります。
もともと健聴だったのが、徐々に難聴や聴力低下を感じ始めたら早めの治療が必要になります。
難聴が進行すると聴力が完全に戻らなくなるリスクが高まるほか、さまざまな問題や弊害が重なって起こるため症状による原因の早期発見が重要です。
もしかしたら耳垢が詰まっていることが原因だったり早期発見によりすぐに治る症状だったりするかもしれません。
いつもと聞こえ方が違ったり耳の中で違和感があったりしたら。
一時的な症状ならいいですが、数日ほど症状が続く場合はたいしたことはないと放置せずに早い段階で耳鼻咽喉科での受診を心がけてください。
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