
健康診断などで一度は受けたことがあるはずの聴力検査。
難聴や聴力低下など耳の不調を感じたり学校や会社の健康診断で要検査を促されたりすると、耳鼻咽喉科で聴力検査を受けることがあります。
実は学校や企業で行われる聴力検査は簡易的な選別聴力検査で、耳鼻咽喉科で実施されるのは純音聴力検査であることを知っている人は多くないでしょう。
純音聴力検査には音の大きさだけでなく高音から低音まで音の周波数による聞こえの具合を調べ、気導聴力と骨導聴力のタイプがあります。
では選別聴力検査と純音聴力検査は何を目的に何を測定するのか、どのような違いがあるのか。
この記事では、聴力検査の種類と特徴から簡易的な選別聴力検査と耳の精密検査ともされる純音聴力検査の違いを説明します。
耳の聞こえ方に違和感がある人をはじめ学校や会社の健康診断で要検査と促された人にとっても、純音聴力検査を受ける必要性を知るご参考になれば幸いです。
聴力検査の主な種類
聴力検査には、実は実施場所や検査のタイプによっていくつかの種類があるのをご存知でしょうか。
まず、病院やクリニックの耳鼻咽喉科で実施される聴力検査は「純音聴力検査(標準純音聴力検査)」が一般的です。
一方で、学校や会社の健康診断で受ける聴力検査は「選別聴力検査」と呼ばれます。
もし健康診断の聴力検査で「所見あり」「要検査」などと診断されると、耳鼻咽喉科を受診するように促されます。
所見ありというのは、健康診断や診察で何らかの異常が認められた状態です。
異常が認められた場合に、医師は要経過観察・要治療・要再検査などの指示(判定)を出します。
健康診断で検査したのになぜ耳鼻咽喉科で検査し直す必要があるのか、聴力検査には大きく分けて3つの種類があり以下の通りです。
選別聴力検査
選別聴力検査は、1000Hz(低音域)と4000Hz(高音域)の周波数2つにおける聞こえ具合を調べる検査です。
もともとは騒音環境で働いている人の聴力障害を調べるための検査で、日常会話の聞き取りに支障がないか騒音性難聴や加齢性難聴などの兆候がないかを早期に発見するために行われます。
選別聴力検査は、学校や企業の健康診断などで行われる簡易的な聴力検査です。
設定された周波数2つの音が聞こえなかった場合は、難聴や聴力低下の疑いがあるとして耳鼻咽喉科での受診や精密検査(純音聴力検査など)を勧められます。
純音聴力検査
純音聴力検査は、音の大きさに加えて高音から低音までさまざまな周波数の音に対する聞こえ具合を調べる検査です。
正式には標準純音聴力検査ともいい、気導聴力検査と骨導聴力検査の2タイプに分けられます。
純音聴力検査は、病院やクリニックの耳鼻咽喉科で行われる精密検査です。
難聴や聴覚障害のある人が受けることが一般的で、筆者も前述の選別聴力検査では聞こえないため耳鼻咽喉科での純音聴力検査を定期的に受けています。
語音聴力検査
語音聴力検査は、どの程度の音の大きさで正確に聞き取れるのか言葉や数字の聞き取り能力を調べる検査です。
語音明瞭度や語音弁別能を測定し、補聴器の効果を予測したり難聴の原因を調べたりするために行われます。
語音聴力検査は難聴の程度が重い人や補聴器を装用している聴覚障害者を対象に行われることが多く、通常の聴力検査で受けることは滅多にありません。
語音聴力検査については、別記事で紹介します。
この記事では、選別聴力検査に少し触れながら難聴における聴力検査として用いられる純音聴力検査を中心に説明していきます。
純音聴力検査と選別聴力検査の違い
耳鼻咽喉科での純音聴力検査と健康診断などで用いられる選別聴力検査には、以下のような違いがあります。
項目 | 純音聴力検査 | 選別聴力検査 |
---|---|---|
実施場所 | 耳鼻咽喉科 | 健康診断(学校・会社など) |
測定周波数 | 7つの周波数(125、250、500、1000、2000、4000、8000Hz) | 2つの周波数(低音域の1000Hzと高音域の4000Hzのみ) |
目的 | 難聴の有無・程度・種類を詳細に調べる | 集団から騒音性難聴など聴力低下の兆候がある人を早期に発見する |
検査精度 | 高い(多くの周波数での聴力データ) | 低い(限られた周波数での聴力データ) |
結果行動 | 結果に基づいて適切な治療や対応を検討 | 異常があった場合に耳鼻咽喉科で受診・精密検査 |
学校や企業の健康診断で使われる選別聴力検査は、もともとは集団での騒音に基づく難聴や聴力低下を判定する検査で騒音の多い作業環境改善のための項目として設定されています。
集団の中で簡易的に効率よく、騒音性難聴や加齢による聴力低下の兆候がある人を早期に発見するために行われます。
その選別聴力検査の結果で所見あり・要検査・要診察などの異常や指摘を受けた人をより詳細に調べるのが、耳鼻咽喉科で行われる純音聴力検査です。
純音聴力検査を受ける必要がある状況
学校や会社で行われる選別聴力検査の結果によっては、耳鼻咽喉科での純音聴力検査を受けるようにいわれることがあります。
耳鼻咽喉科で純音聴力検査を受ける必要があるのは、以下のような状況の時です。
選別聴力検査の結果で異常があった場合
前述の通り、学校や会社の健康診断における選別聴力検査で所見あり・要検査などの異常を表す結果が示されることがあります。
簡易的な聴力検査でさらに詳しい聴力検査を受けるべきと指摘があった場合は、耳の精密検査ともいわれる耳鼻咽喉科での純音聴力検査を受けることが望ましいです。
聞き取りにくいことが増えた場合
日常会話や電話で相手の声が聞き取りにくいと感じたりテレビやラジオの音量を以前より大きくしないと聞こえなかったりする時は、純音聴力検査を受けることをおすすめします。
詳しくは後述しますが、純音聴力検査を受けることで聞こえない聴力レベルや聞き取れない周波数を調べることができ難聴の種類までわかることが多いためです。
特定の音が聞き取りにくい場合
高い音域や低い音域など特定の音域が聞き取りにくい、いつもは普通に聞こえる音が途切れて聞こえる場合も耳鼻咽喉科での純音聴力検査を推奨します。
どの音が聞こえなくなったのか、耳内のどの部位に異常が起きたのかを純音聴力検査を受けることでわかることがあります。
耳鳴りや耳の閉塞感がある場合
耳の中で音がする耳鳴りが頻繁にある、耳の中が詰まったような閉塞感がある場合も耳鼻咽喉科での受診をしたほうがいいです。
難聴が進行すると、実際には鳴っていないのに耳の奥で音が鳴ることが多くなります。
聴力が低下したことがわかるだけでなく、メニエール病などの疑いもあるため治療できる可能性を考えると早めに耳鼻咽喉科を受診しましょう。
バランス感覚に問題がある場合
めまいやふらつきが頻繁に起こる、バランスをとるのが難しい場合は早めに耳鼻咽喉科での受診が必要です。
難聴の程度によっては、平衡機能も劣る可能性があるためです。
周囲に指摘された場合
家族や友人から聞き取れていないかもしれないと指摘されたり、職場での会議や打ち合わせなどで聞き漏れがあったりした時は純音聴力検査を受けてみてください。
単に疲れやストレスといった一時的な原因であれば、休むことが重要です。
他、病歴など
以前から難聴の症状があるだけでなく、聴力に影響を与える病歴がある場合も注意が必要です。
例えば外耳炎や中耳炎など耳の病気を繰り返している、耳の手術を受けたことがある場合は定期的に耳鼻咽喉科での検査をすることが欠かせません。
また、加齢に伴う聴力低下を感じている場合も聴力検査を受けましょう。
純音聴力検査の目的と方法
耳鼻咽喉科の純音聴力検査では、どんな目的でどのような方法で実施されるのでしょうか。
純音聴力検査には、気導聴力検査と骨導聴力検査の2つの検査タイプで構成されています。
気導と骨導それぞれ異なる部分の聴力を測定することで、耳の健康状態を総合的に判定することが可能です。
気導聴力と骨導聴力という検査の違いを明確にするために、それぞれの具体的な目的と方法を説明します。
気導聴力検査の目的や方法
気導聴力検査を行う目的や方法、検査の意図は以下の通りです。
目的
気導聴力検査の目的は、外耳・中耳・内耳を通して音がどのように伝わるか全体的な聴力レベルを測定します。
方法
気導聴力検査の方法は、ヘッドホン(気導受話器)を耳に装着し検査するための音を直接耳の中に送ります。
具体的にはオージオメーター(聴力検査機)を使って音の大きさを変えながらさまざまな周波数の音を流し、受検者は音が聞こえた時あるいは聞こえている間に応答スイッチボタンを押したり手を上げたりして応答します。
特徴・検査の意図
気導聴力検査は、音が空気を通って耳に届けて通常で聞き取れる経路を判定する仕組みです。
例えば外耳や中耳に問題がある場合、その影響が反映されるといえます。
骨導聴力検査の目的や方法
骨導聴力検査を行う目的や方法、検査の意図は以下の通りです。
目的
骨導聴力検査の目的は、外耳や中耳を通さないで内耳および聴神経の機能を調べるために音の伝達を測定します。
方法
骨導聴力検査の方法は、骨伝導振動子(骨導受話器)を耳の後ろ(頭蓋骨)に直接当てて検査するための音を送ります。
送られた音は振動によって内耳に伝わり、聴神経に到達する流れです。
具体的にはオージオメーターを使って異なる音量とさまざまな周波数の音を流し、受検者は音が聞こえた時あるいは聞こえている間に応答スイッチボタンを押したり手を上げたりして応答します。
特徴・検査の意図
骨導聴力検査は、外耳と中耳による影響を除いた状態で内耳と聴神経の機能を判定する仕組みです。
例えば骨導聴力が正常でありながら気導聴力に問題がある場合、外耳や中耳に問題や障害があることを意味します。
このように純音聴力検査は気導聴力と骨導聴力を組み合わせて検査することで、全体的な聴力レベルをはじめそれぞれの異常や障害の原因を特定するのに役立つのです。
聴力検査を受けることの重要性まとめ
目的や方法・検査内容まで異なる耳鼻咽喉科での純音聴力検査と健康診断などでの選別聴力検査。
とくに純音聴力検査は耳の精密検査ともされ、難聴の進行や聴力低下に伴う聞こえ具合がわかるだけではありません。
気導聴力と骨導聴力を組み合わせて検査を行うことで難聴の原因や種類も特定でき、それぞれの症状に応じた診察や治療がしやすくなります。
学校や会社の健康診断で行われる選別聴力検査で異常があった場合は、耳鼻咽喉科での純音聴力検査を受けることが望ましいです。
仮に異常値が検出された場合には、再度同じ検査を受けることで異常値が一時的なものなのか持続的なものなのかを確認できます。
もし再検査でも異常値が検出された場合は、精密検査が必要です。
騒音性難聴か加齢性難聴なのか、それともメニエール病なのか、耳の病気を早期に発見するために聴力検査は重要です。
周囲の音声が聞こえにくくなったり耳鳴りやふらつきがあったりするなど、少しでも耳に違和感があったら。
耳の健康を守るためにも、定期的に聴力検査を受けましょう。
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