
旅行や出張など目的地までの移動に利用することの多い電車やバス、タクシーなどの交通機関。
実は電車や新幹線の乗車において、障害のある人に向けた割引制度があるのをご存知でしょうか。
運営会社によって対応が異なりますが、一定の条件を満たせば一般料金の半額で乗車することができます。
鉄道のほかにも飛行機やバスから、タクシー、フェリーまでさまざまな交通機関でも運賃の割引があります。
また高速道路などの有料道路でも、場合によっては通行料金の割引適用が可能です。
この記事では、交通・道路に焦点を当てて障害者向けに設けられている割引・優遇制度を紹介します。
食事や宿泊にかかる代金が比較的割高のため、移動手段における費用負担を軽減するための情報になれば幸いです。
交通・道路の障害者割引について
交通・道路における障害者割引は、運営・管理会社や一定の条件によって適用される内容は変わりますが、主に以下の交通機関と道路で各種料金の割引があります。
種類 | 障害者割引の対応 |
---|---|
電車 | 鉄道会社や条件によっては約半額 |
飛行機 | 航空会社によっては約20%割引 |
バス | バス会社によっては約半額 |
タクシー | タクシー会社によっては10%割引 |
フェリー | フェリー会社や条件によっては約半額 |
有料道路 | 障害の程度や条件によっては約半額 |
自動車の燃料 | 障害の程度や条件によってガソリン代を助成 |
駐車場 | 管理機関によっては無料または割引 |
レンタカー | レンタカー会社によっては最大30%割引 |
障害者割引の適用対象
障害者割引が適用される対象は、以下の手帳を所有している人です。
- 身体障害者手帳
- 療育手帳
- 精神障害者保健福祉手帳
- 障害者手帳アプリ(ミライロID)
基本的には上記の障害者手帳や障害者手帳アプリを提示することで割引を利用できますが、事前の申請・登録が必要なケースもあります。
割引の可否や割引率は、旅客運賃減額欄に「第1種」または「第2種」と記載されていることが目安です。
次項からは、交通機関や道路をジャンル別に障害者割引の対応について説明していきます。
電車における障害者割引
電車における障害者割引は運営会社によって条件や対応が異なりますが、割引が適用されるのはJRや私鉄など主に以下の通りです。
- JR・私鉄電車
- 新幹線
- 地下鉄
- 路面電車
- その他・留意事項
身体障害者手帳または療育手帳を所有している人は、一般に運賃(乗車料金)が半額になります。
JR・私鉄電車
JRや私鉄では、旅客運賃減額欄に「第1種」と記載されている身体障害者手帳または療育手帳をもつ本人と同行する介護者1人を対象に乗車料金が半額です。
割引対象者 | 割引対象乗車券 | 割引率 | 詳細 |
---|---|---|---|
第1種障害者とその介護者 | 普通乗車券・回数乗車券・普通急行券 | 50% | 私鉄など他鉄道会社線とまたがる場合を含む/ただし回数乗車券はJR線区間単独の発売 |
第1種障害者とその介護者または12歳未満の障害者とその介護者 | 定期乗車券(小児定期乗車券を除く) | 50% | 私鉄等他鉄道会社線とまたがる場合を含む/小児定期旅客運賃については割引適用外 |
第1種・第2種障害者の単独利用 | 普通乗車券 | 50% | 片道の営業キロが100キロを超える場合(私鉄線など他鉄道会社線にまたがる場合を含む) |
なおJR各社や私鉄の運営会社によっては割引の可否や割引率が異なる場合があるため、公式サイトなどで確認してください。
新幹線
前項の上記表3番目にある通り、JR新幹線の乗車料金も片道の営業キロが100kmを超える場合に障害者割引が適用されます。
障害のある本人が単独で利用する場合に限りますが、みどりの窓口や係員のいる改札外の窓口で各種手帳を提示することで乗車券が半額になります。
なお、指定席券は割引対象外ですので注意してください。
また新幹線の障害者割引と往復割引は併用できません。
障害者割引を適用する場合、往復で予約できず片道ずつでの申込みが必要です。
精神障害者にも割引制度導入
2025年(令和7年)4月より、精神障害者にも割引制度が導入されました。
鉄道で障害者割引を受けるためには精神障害者保健福祉手帳が必要ですので、詳しくはお住まいの市区町村(自治体)に確認してください。
参考:精神障害者に対する旅客鉄道株式会社等の旅客運賃の割引について(東京都福祉局)
地下鉄
地下鉄の障害者割引は、運営会社によって適用条件が異なります。
一般的には、障害のある本人が単独で乗車するか介護者の付き添いを必要とするかで割引対象が分かれるようです。
また、身体障害者手帳・療育手帳・精神障害者保健福祉手帳の旅客鉄道株式会社旅客運賃減額欄に記載される「第1種」または「第2種」によっても割引対象が変わります。
旅客運賃減額欄の記載がない手帳の場合は、障害等級によって運賃割引が適用されるしくみです。
路面電車
一般道路の中央を走る路面電車は、障害者割引を適用するところが多いです。
基本的には身体障害者手帳・療育手帳・精神障害者保健福祉手帳などを提示することで、本人と同行する介護者1人までが普通運賃の半額で利用できます。
なお、事業者や運営会社によって制度が異なるため事前に確認してください。
その他・留意事項
鉄道・地下鉄の運営会社や障害の程度によっては、回数券・定期券・急行券などが半額になる場合もあり同行する付き添いの介護者も半額です。
また精神保健福祉手帳をもつ人も割引対象にしている場合もありますので、運営会社の公式サイトなどで確認してください。
なお、往復割引と併用することはできません。
Suica(スイカ)やPASMO(パスモ)などのプリペイド式ICカードでは、旅客運賃減額欄が第1種の障害者手帳を所有し介助者がいる場合であれば定期券を障害者割引で購入することが可能です。
ただし鉄道会社により条件・ルールが異なりますので、詳しくは各社の窓口で確認してください。
他に登山鉄道やトロッコ電車でも実は障害者割引があり、別記事で紹介します。
飛行機における障害者割引
飛行機の利用も身体障害者や知的障害者、精神障害者、難病患者は各種手帳を提示することで障害者割引を利用できます。
航空会社によって対応はさまざまですが、基本的に障害者手帳をもっている本人と同一便に搭乗する介護者(1人まで)が利用でき割引率は約20%くらいです。
ただし障害者割引がある航空会社でも国内線のみで、国際線は割引対象外です。
航空会社によって障害者割引の可否や適用条件が異なるため、各航空会社の公式サイトで確認してください。
他の割引との比較
航空料金の中には早割といって、一定の日数より早く予約した場合に一般料金より安くなります。
通常の早割に比べると障害者割引の料金は高くなるため、早い段階で予定が決められる場合は早割での利用がおすすめです。
バスにおける障害者割引
バスにおける障害者割引は、運営会社によって適用可否や割引率もさまざまですが基本的に障害者手帳の提示により通常運賃の半額になります。
- 公営バス
- 民営バス
- 路線バス(深夜バス)
- 高速バス(夜行バス)
公営バス
地方自治体が直接経営する公営バスの障害者割引は、身体障害者手帳・療育手帳・精神障害者保健福祉手帳などの手帳を提示することで割引になります。
各種障害者手帳の提示ではなく割引証の交付や障害者用ICカードの利用など、各自治体や交通局によって条件や内容が異なるため確認が必要です。
割引率は一般的に普通運賃が5割引、定期運賃は3割引となります。
民営バス
民間企業が運営している民営バスの障害者割引は、乗車時に障害者手帳の提示または「民営バス乗車割引証」を提示することで普通運賃が5割引になります。
また定期券の場合は、購入時に「民営バス定期券割引購入申込書」を提示することで運賃が3割引です。
割引の申請手続きは、お住まい市区町村で割引証の交付を受ける必要があります。
第1種の身体障害者手帳または愛の手帳を所有している人は、介護人も一緒に割引を受けられる制度がありますので福祉窓口で確認してください。
路線バス(深夜バス)
路線バスの障害者割引は、身体障害者手帳・療育手帳・精神障害者保健福祉手帳などの手帳を提示することで本人と同行する介助者の運賃が半額となります。
なお地域やバス事業者によって内容が異なるため、乗車するバス会社の公式サイトや市区町村の窓口で確認してください。
また、バスの種類や手帳の種類によっては割引の対象外となる場合もあるので注意が必要です。
とくに精神障害者保健福祉手帳を所有している人は、東京都内に限定している場合や一部路線では割引対象外の場合があります。
高速バス(夜行バス)
高速バスは、高速道路や自動車専用道路を利用して都市間や観光地などを結ぶ長距離移動用の乗合バスです。
日中に運行する昼行バスと夜間に走行する夜行バスがあります。
高速バスの障害者割引は、バス会社によって割引内容や対象が異なりますが、一般に身体障害者手帳・療育手帳・精神障害者保健福祉手帳を提示することで本人のみ割引で乗車できます。
割引率は通常料金の半額が多いですが、障害者手帳の種類や等級によっては介護者も割引対象となるなどバス会社によって適用範囲が異なるため、公式サイトや窓口などで確認してください。
タクシーにおける障害者割引
タクシーにおける障害者割引は、会計時に身体障害者手帳または療育手帳を提示することで料金が1割引きになります。
なお精神保健福祉手帳を所有する人はタクシー会社によって割引対象外となる場合がありますので、利用する際は事前に確認してください。
フェリーにおける障害者割引
フェリーにおける障害者割引は、障害者手帳を提示することで運賃の割引が受けられます。
旅客運賃の割引率は、本人が単独で利用する場合も介護者1人が同行する場合でも一般的に約半額が多いです。
ただしフェリー会社によっては、手帳の種類や障害の程度によって割引対象が分かれることがあります。
また、割引対象となる運賃が旅客運賃のみなのか車両運賃も対象なのかによっても異なるため注意が必要です。
さらに、デジタル機器を導入していない昔ながらのフェリーでは障害者手帳アプリのミライロIDが使えない場合もありますので事前に確認することをおすすめします。
道路における障害者割引
ここまでは交通機関における障害者割引を紹介しましたが、道路における障害者割引も条件次第で利用できます。
一般有料道路
一般有料道路というのは、高速道路を補完し高速ネットワークを形成する道路や地域に密着した道路や観光道路などです。
そんな有料道路では、身体障害のある人が自ら車を運転する場合に障害者割引を利用できます。
また重度の身体障害者もしくは重度の知的障害者の人が同乗し本人以外の人が運転する場合にも、所定の要件を満たす自動車であれば割引率50%以下の障害者割引が適用されます。
高速道路
高速道路は、道路法により規定された高速運転用の自動車専用道路で全国をつなぐ道路です。
身体障害者手帳をもっている本人が運転して高速道路を通行する場合に、高速料金が約半額になります。
ただし、割り切れない数字は10円切り上げられる点には注意してください。
また市区町村の福祉窓口などで事前に申請・登録することで、ETCカードも利用可能です。
普通自動車だけでなく、125cc以上のバイクでも障害者割引が適用されますのでツーリングなどにも活用できます。
高速道路の障害者割引については、別記事で詳しく紹介します。
自動車燃料券(ガソリン代助成券)
ガソリン代に障害者割引はありませんが、お住まいの自治体で発行される自動車燃料券(ガソリン代助成券)を使った助成が利用できます。
障害者割引の形ではありませんが、制度の活用で安くガソリンを使うことができます。
障害者手帳を所有している人の中で取得している手帳の等級などが要件に当てはまる人が対象です。
燃料券交付の要件は自治体によって異なるため、詳しくはお住まいの市区町村に問い合わせた上で交付の対象者であるかを確認してください。
駐車場における障害者割引
公営駐車場や有料駐車場の利用における障害者割引は、施設や管理会社によって適用の有無や手続き方法が異なります。
民間施設の場合
民間施設にある駐車場の場合、各種手帳を提示することで無料または割引が適用されることもあれば駐車券を発券した後に入口または出口で減免処理が必要なこともあります。
また各施設によっては障害の有無関係なく、入庫してから2時間は無料としているところも多いですので事前に確認することをおすすめします。
公共施設の場合
お住まいの市区町村にある公共施設や公園の公営駐車場は、基本的に無料で駐車ができます。
なお各種障害者手帳を提示するのみで割引が利用できる場合と事前に申請手続きが必要な場合がありますので、お住まいの市区町村(役所の福祉窓口)で確認してください。
レンタカーにおける障害者割引
レンタカーは事業者や店舗によって障害者割引の有無や割引率が異なりますが、身体障害者手帳や療育手帳、身体障害者手帳アプリ(ミライロID)を提示することで基本料金が10%割引になったり会員割引との併用で最大30%引きになったりします。
本人が運転するだけでなく、介護・介助者が運転する場合も同様です。
調べてみたところ、トヨタレンタカーでは身体障害者手帳や療育手帳、ミライIDアプリなどの提示で基本料金が10%割引でした。
主なレンタカー会社の障害者割引については、以下の表を参考にしてください。
レンタカー会社 | 障害者割引 | 参考サイト |
---|---|---|
トヨタレンタカー | 基本料金10%割引 | 福祉割引について |
ニッポンレンタカー | 福祉優待料金(車種クラスで異なる) | 福祉優待料金について |
オリックスレンタカー | 会員ランクによって基本料金5~30%割引 | 障害者割引について |
ただし障害者割引を使う場合に、他の割引との併用ができないケースがあります。
運転することが多い・レンタカーの利用が多い人は、会員になることでよりお得になるケースもありますので各レンタカー会社の公式サイトなどで確認してください。
交通・道路における障害者割引まとめ
一定の条件はあるものの交通機関や有料道路の通行にも設けられている障害者割引。
旅行や遠出、出張などでは宿泊費や食事代など出先での出費がかかる中、障害のある人は新幹線や高速道路の移動手段で節約することが可能です。
筆者も長距離での移動手段として、新幹線の乗車券や高速バスの運賃が約半額で利用できることに助かっています。
新幹線の指定席券は割引になりませんが、乗車券だけでも半額で利用できることでとくにコロナ禍の3密を意識していた頃はグリーン席を選べることもありがたいことでした。
なお飛行機は、早割のほうが障害者料金より安く済む場合があります。
ハンデがあることにより旅先や出先ではできないことを別の形で補える意味では、交通機関など移動手段においての割引を大いに活用して旅や遠出を楽しみましょう。
コメント