
2025年7月30日8時25分頃、ロシア・カムチャツカ半島付近でマグニチュード8.8の地震が発生しました。
北海道から和歌山県までの太平洋沿岸部に津波警報が発令され、海水浴場などでは赤と白の格子柄の旗が掲げられていました。
この旗は、実は津波警報・大津波警報・津波注意報を伝える津波フラッグであるのをご存知でしょうか。
津波フラッグは、海で遊泳している人や聴覚障害のある人へ視覚的に津波を知らせるための役割があります。
気象庁では2020年から実施していると説明していますが、SNS上ではこの津波フラッグのことを知らなかったという声が相次ぎました。
この記事では、聴覚障害のある人や海で遊泳している人へ視覚的に津波を知らせるための津波フラッグについて紹介します。
津波フラッグとは

津波フラッグは、大津波警報、津波警報、津波注意報が発表されたことを知らせる旗です。
津波フラッグの概要
津波警報などは一般にテレビやラジオ、携帯電話、サイレンといったさまざまな手段で伝達されます。
その中で海水浴場などでは、2020年6月から津波フラッグによる視覚的伝達が行われています。
津波フラッグを用いることで、聴覚障害のある人や遊泳中の人などにも津波警報などの発表を知らせることが可能です。
津波フラッグのデザイン
津波フラッグのデザインは、長方形を4分割した赤と白の格子模様です。
縦横の長さや比率に決まりはありませんが、遠くからの視認性を考慮して短辺100センチ以上が推奨されています。
津波フラッグは、貴船の進路に危険ありを意味して主に船舶間の通信に用いられる国際信号旗「U旗」と同様のデザインです。
津波フラッグの目的・役割

津波フラッグは、具体的にどんな目的や役割があるのでしょうか。
本来は船舶用の警告旗
津波フラッグは、長方形を4分割した赤と白の格子模様になっています。
本来は、海上の船舶に危険が迫っていることを伝える世界共通の旗模様なのです。
前述の通り船舶間の通信に用いられるU旗で、海外では海からの緊急避難を知らせる旗として多く用いられています。
なお、U旗は他の国際信号旗と組み合わせることによって別の意味になることがあります。
こうして海上の危険を知らせるため、日本のライフセーバーでは共通する意味としてこの旗を津波フラッグとして使用しているわけです。
聴覚障害のある人などに視覚で伝える旗
津波フラッグは、2020年6月に気象業務法施行規則と予報警報標識規則が改正され、視覚に訴える伝達ができるように用いられることになりました。
聴覚に障害がある人や、波音や風で周囲の音が聞き取りにくい遊泳中の人などに津波警報などの発令を伝えることが可能です。
また警報の発令だけでなく、海から上がるように呼びかけることもできます。
津波フラッグを用いることで、海にいる人たちが津波警報などの発令を視覚的に認知できるようになります。
津波フラッグを導入している市区町村
気象庁によると、2025年1月末時点で海水浴場があると回答した397市区町村のうち、70%にあたる284市区町村が津波フラッグを導入しています。
津波フラッグを導入している地域では、ライフセーバーや監視員などが津波フラッグを振ったり海岸から見える建物などに旗を掲げたりしています。
しかし、時に津波フラッグを掲出しない場合もあるそうです。
気象庁は「伝達する実施者の安全が確保されている場合を除き、津波フラッグの掲出は行わない」としています。
また「伝達を継続した結果、伝達の実施者の避難が遅れることはあってはならない」ともしています。
津波フラッグに関する認知度
津波フラッグに関する認知度は、どこまであるのでしょうか。
気象庁の調査資料(2024年度)より津波フラッグに関する認知度をまとめましたので、参考にしてください。
津波フラッグの認知度
津波フラッグにおける認知度は、以下の通りです。
| 津波フラッグを知っていてその意味を知っている | 4.00% |
| 津波フラッグは知らないが津波を伝える旗があることは知っている | 6.7% |
| 津波フラッグは知っているがその意味は知らない | 7.7% |
| 津波フラッグを知らない | 81.6% |
2024年度の調査結果は、2022年度に実施された同調査と傾向は大きく変わってはいませんでした。
津波フラッグの使用場面における認知度
前述の質問で津波フラッグを知っている・津波を伝える旗があることを知っている人のうち、津波フラッグの使用場面における認知度は、以下の通りです。
| 大津波警報が発表された時 | 34.2% |
| 津波警報が発表された時 | 45.4% |
| 津波注意報が発表された時 | 25.5% |
| わからない | 28.8% |
2022年度に実施された同調査と比較して、傾向は大きく変わっていない結果でした。
津波フラッグを知ったきっかけ
津波フラッグを知ったきっかけについての回答結果は、以下の通りです。
| テレビ | 67.1% |
| SNS | 20.1% |
| 自治体広報誌 | 9.8% |
SNSとは、YouTubeやTwitterX、Instagramなどのソーシャル・ネットワーキング・サービスです。
津波フラッグに対する認識を

津波フラッグは、波音や風で音声が聞き取りにくい遊泳中の人、聴覚障害者などが津波警報などの発令を視覚的に認知できるツールです。
活用事例はあるけれど…
2024年4月3日に発生した台湾東部沖地震では、沖縄本島地方および宮古島・八重山地方に津波警報が発表されました。
その際に、沖縄県内では津波フラッグを使った伝達が実施されています。
津波警報の発表時、ライフガードの人たちがビーチの遊泳者に向けて津波フラッグを掲示して海から上がるよう呼びかけて避難誘導しています。
避難誘導後も、継続して津波フラッグをビーチに掲げたりしていたのです。
しかし2025年7月30日に発令された太平洋沿岸での津波警報を受けて、SNS上では津波フラッグの意味を知らなかった・初めて知ったという声が相次ぎました。
気象庁の公式サイトでは2020年6月から実施していると説明していますが、まだまだ津波フラッグに対する認識が低いのです。
参考:津波フラッグ(気象庁)
津波フラッグの役割について共有を
波音や風で音が聞き取りにくい遊泳中の人や外国人観光客、高齢者、子どもなどあらゆる立場の人の命を守るために、津波フラッグは視覚的なシグナルとして効果的な伝達手段です。
海水浴やマリンスポーツなどで海へ行く人、とくに聴覚障害のある人は改めて津波フラッグの目的や役割を把握しておきましょう。
また一緒に海へ行く家族や友人などのグループ行動では、もしかしたら知らないかもしれない津波フラッグの意味を教えてあげることを心がけてほしいものです。
そして、海水浴場や海岸付近で津波フラッグを見かけたら速やかに海から上がり避難してください。
視覚的に危険を伝える津波フラッグまとめ
津波フラッグは、津波避難における視覚的なバリアフリーの1つです。
海水浴やマリンスポーツなど海に入っている人に向かって、どんなに大きい声で叫んでもあまり聞こえていなく波音などで声はかき消されます。
遊泳中の人が健聴者でも声が届かないくらいなら、聴覚障害のある人には砂浜からの声が届くはずがありません。
とくに普段から補聴器を装用している人は、海の中では外していることが多いため全く聞こえません。
しかし海で遊泳中に声が届かなくても、砂浜や周囲でこの津波フラッグを目にしたら危険を察知してすぐに海から上がることもできます。
そのためには普段から津波フラッグの意味や目的、デザインを把握しておくことが重要です。
津波フラッグという視覚的な伝達手段を用いることで、障害のある人だけでなく未来を担う子どもたちにとっても津波警報などの発令を認知し安全に命を守る行動ができるように願っています。
以下の記事では、社会に参加する上で生じる4種類のバリアと心のバリアフリーの重要性について解説していますので併せてお読みください。

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