
補聴器を利用するために必要な付属品の1つである電池。
電池とひと口にいっても、補聴器に使えるのは空気亜鉛電池と限られています。
また、使用環境に気をつければ電池本来の性能を発揮し寿命を長持ちさせることが可能です。
この記事では、補聴器専用として使われる空気亜鉛電池(空気電池)の性質や保管方法などについて紹介します。
補聴器本体とともに適した環境や使い方・留意点についても解説しますので、電池を効率よく長持ちさせるご参考になれば幸いです。
補聴器専用の空気亜鉛電池について

補聴器で使用する電池は、無水銀タイプの空気電池がほとんどです。
空気電池の特徴・仕組み
補聴器に使用されている電池は、ゲーム機やリモコンなどで使われる一般的なボタン電池ではなく空気電池と呼ばれるボタン電池です。
正式には「空気亜鉛電池」ともいい、空気(酸素)と亜鉛の化学反応によって発電する特殊なボタン電池で近年では無水銀タイプが増えています。
電池についているシールを剥がすとプラス極の小さな穴から空気中の酸素を取り込み、電池内部の亜鉛と反応して電気を起こすのが特徴です。
空気電池は補聴器の安定した作動に必要な電圧特性と容量をもっているため、他のボタン電池の代わりに使うことはできません。
補聴器の小型化と安定した性能が求められるため、電圧の変化が少なく大容量の空気電池が採用されています。
無水銀タイプの空気電池とは
補聴器専用として販売されている空気電池の無水銀タイプとは、電池を製造する時に意図して水銀を使用していない環境に配慮した電池です。
水銀の国際的な規制を受けて製造されたもので、以前の空気亜鉛電池に代わって販売が増えています。
環境に優しい一方で従来の電池より寿命が短くなるデメリットがありますが、近い将来では水銀に関する水俣条約によって水銀を含む製品の製造や輸出入ができなくなります。
一部の電池には使用している自然界の材料の中に、除去しきれない極めて微量の水銀が含まれていることがあります。
そのため、補聴器業界では空気電池のパッケージに「無水銀」ではなく「水銀0使用」と表示されることが多いです。
補聴器専用の空気電池は4種類

補聴器専用の空気電池は4種類あり、以下の通りです。
| 品番 | シールの色 | 使用する補聴器のタイプ |
|---|---|---|
| PR536(10A) | 黄色 | 耳穴の奥につけるCICタイプ |
| PR41(312) | 茶色 | 小型の耳かけ型や耳あな型 |
| PR48(13) | オレンジ色 | 耳かけ型や耳あな型 |
| PR44(675) | 青色 | 高出力の耳かけ型 |
耳かけ型や耳あな型といった補聴器のタイプ(種類)によって空気電池のサイズも異なります。
4種類ある電池それぞれには、パッケージカラーやシールの色(黄、茶、オレンジ、青)で区別することが可能です。
電池のサイズは上から順に大きくなり、電池寿命も長くなります。
また補聴器本体のメーカーに合わせる必要はなく、同じ品番の空気電池であれば使用可能です。
補聴器本体と空気電池の性質・保管方法
就寝前など補聴器を装用しない時は乾燥ケースに保管しますが、実は補聴器本体と空気電池は性質が異なるため保管方法に注意する必要があります。
補聴器本体の性質

補聴器本体の主な性質は、以下の通りです。
- 水や湿気に弱いため乾燥が必要
- 温度差で内部に結露が発生しやすい
- 高温の環境では内部部品がダメージを受け性能低下や故障につながる
補聴器は水分や湿気に弱いため、雨が降った時や運動時など水滴がかかったり汗をかいたりすると音が入りにくくなります。
とくに耳かけ型補聴器は、耳の後ろに流れ落ちる汗が本体の内部に染み込んでしまうと部品を腐食させる原因となることが多いです。
冬には、室外と室内の温度差によっては結露が生じることがあります。
湿度に弱いだけでなく、高温になる場所での保管にも弱いです。
高温の環境では、補聴器内部の部品がダメージを受け性能低下や故障につながります。
補聴器用空気電池の性質

補聴器用空気電池の主な性質は、以下の通りです。
- 適度な温度でより長持ちする
- 乾燥に弱いため適度な湿度が必要
- 二酸化炭素の濃度によっては消耗が激しい
補聴器用の空気電池は、気候や使用環境の影響を受けやすい性質があります。
温度が低かったり乾燥が強かったりすると、電池から放出される電圧が低下し電池寿命が短くなるのです。
また空気電池は空気中の酸素を取り入れて発電する仕組みのため、二酸化炭素の濃度が高いと電解液が劣化し寿命が短くなってしまいます。
例えば、冬に活躍するストーブやファンヒーターは二酸化炭素を多く排出します。
また人間の呼吸は酸素を取り入れて二酸化炭素を吐き出すため、狭い室内や車の中も電池の性質が落ちる可能性も大きいです。
補聴器本体と空気電池の違い
前述した補聴器本体と空気電池の性質を表にまとめると、以下の通りです。
| 項目 | 補聴器本体 | 空気電池 |
|---|---|---|
| 弱点 | 水や湿気に弱い | 低温や乾燥に弱い |
| 保管方法 | 乾燥させる | 乾燥させない |
補聴器本体は乾燥が必要なのに対して空気電池は乾燥が大敵のため、最適な保管方法は逆になります。
空気電池を長持ちさせる上手な使い方
では、どのような使い方をすれば補聴器専用の空気電気を効果的に長持ちさせることができるのでしょうか。
寒い冬場や気温が低い時は温める
冬の寒い時期や気温が低い場所では電池の放出する電圧が弱いため、手の中でしばらく温めるのがおすすめです。
逆に高温になる環境も性能の劣化や破裂のリスクがあり、詳しくは「空気電池を使用する際の留意点」で後述します。
二酸化炭素の濃度によって換気をする
空気電池は酸素に触れることで性能を発揮するため、二酸化炭素の濃度が高いほど電池寿命が短くなります。
そのため、ストーブやファンヒーターを使用している室内ではこまめに換気するようにしましょう。
また、人間の呼吸は空気中の酸素を取り入れて二酸化炭素を吐き出します。
人が多く集まる環境や車内でも、時々換気を行うようにしてください。
補聴器本体と空気電池の保管は分ける

前述の通り補聴器の本体は水気や湿気に弱く、一方で空気電池は乾燥する環境で消耗が激しくなります。
補聴器本体は乾燥ケース内に入れ、空気電池は乾燥ケースの上に設けられている電池置き場に置くことで保管場所を分けることが必要です。
乾燥ケースの中に空気電池を収納したままの補聴器本体を保管すると、電源が入ったままの状態になるため消耗して電池切れを起こします。
いくら電池蓋を開けているからといっても、乾燥によって電圧がより放出されてしまうため注意してください。
金属の近くで保管しない
補聴器用の空気電池は、金属の近くで保管すると電気が流れてしまいショート(短絡)が発生します。
ショートが起きると電力が急激に消費され、電池の消耗が早まってしまうため金属と一緒に保管しないようにしてください。
また補聴器用の空気電池を金属物と一緒にした状態で携帯することもリスクがあり、詳しくは「空気電池を使用する際の留意点」で後述します。
空気電池を使用する際の留意点
最後に、空気電池を使用する際の留意点を7つ紹介しますので参考にしてください。
- 必ず補聴器専用の空気電池を利用する
- 電池サイズが小さいほど寿命が短い
- 新しい空気電池は1分置いてから
- 火気の近くに置かない
- 金属と一緒に携帯しない
- 空気電池の使用期限に注意
- 使用済み電池の処分には注意
必ず補聴器用の空気電池を利用する

ホームセンターや家電量販店、100円ショップなどで販売されているボタン電池は、補聴器用の電池として使うことはできません。
一般的なボタン電池は補聴器用のボタン電池と形状が似ていますが、そもそもの仕様から性質も電圧も異なります。
一般のボタン電池を補聴器に使うと故障の原因になるため、補聴器用空気電池として販売されている商品以外は絶対に使用しないでください。
ボタン電池の見分け方は、補聴器専用であれば空気電池のパッケージに「補聴器専用」「補聴器用」と記載されていることが目印です。
なお一部の家電量販店でも補聴器用の空気電池を販売していますが、家電製品売り場や玩具・ゲームコーナーではなく補聴器・メガネコーナーで購入できます。
電池サイズが小さいほど寿命が短い
電池の基本として知られていることですが、補聴器用の空気電池もサイズによって寿命が異なります。
筆者が使用している空気電池は、オレンジ色のシールが貼られているPR48(13)で約10日もちます。
重度難聴向けの耳あな型補聴器は、耳の外にまで見えるほど本体のサイズが大きいためです。
一方で黄色のシールが貼られたPR536(10A)はサイズが小さく、耳穴の奥に入る小さな補聴器に使われるため約4~5日程度しかもたないとされています。
新しい空気電池は1分置いてから
新しい空気電池はシールを剥がして空気に触れさせることで発電を開始し、一度剥がすと消耗し始めるのが特徴です。
シールを剝がしたばかりの空気電池は電圧が上がりにくいことがあるため、1分以上待ってから使うようにしましょう。
補聴器専用の空気電池は、空気中の酸素を取り込んでから発電する仕組みがあるためです。
またシールの粘着物質が空気電池についてしまうこともあるため、電池を交換しても音が入りづらい時はシールのついていたプラス極の部分をティッシュなどで拭き取ってみてください。
火気の近くに置かない
補聴器用の空気電池は、前述の通りシールを剥がすことで発電する仕組みがあり高温に弱いのも特徴です。
そのため、火気の近くや直射日光が当たる場所など高温になる環境に置かないように注意してください。
高温になる環境に置くと内部部品がダメージを受けて、性能の劣化や液漏れ、さらには破裂の恐れがありケガや補聴器の故障の原因となります。
補聴器用空気電池の保管は、常温が推奨されており10~25℃が適切です。
また、石油ストーブやファンヒーターなどの暖房機器からは二酸化炭素が発生します。
空気電池は、空気中の酸素を取り入れて発電する仕組みです。
そのため二酸化炭素が多い環境では電解液が劣化し、電池本来の性能が発揮できずに寿命が短くなってしまうことがあります。
金属と一緒に携帯しない
補聴器用の空気電池を金属の物と一緒に携帯・保管すると、ショート(短絡)による危険性があります。
金属は電気を流す性質があり、もし電池のプラス極とマイナス極の両方に鍵や硬貨、アクセサリーなどの金属が触れるとそれらの金属を通じて電気が流れてしまいショートが発生します。
ショートにより一度に過大な電流が流れることで発熱し、ひどい時には破裂や発火につながる可能性がありたいへん危険です。
そのため硬貨に触れやすい財布の中はもちろん、鍵やネックレスの入ったポーチやポケットなど金属と一緒に携帯しないでください。
空気電池のパッケージ裏には、警告文として「金属製の物と一緒に携帯・保管しないでください」と明記されています。
空気電池の使用期限に注意
意外に思うかもしれませんが、空気電池には使用期限があります。
使用期限が過ぎた電池を使用することには問題ありませんが、通常より発電が弱く寿命が短くなることに留意してください。
筆者の体験談ですが、補聴器を購入した際の特典として8個入りの空気電池を10パック(計800個)もらったことがあります。
気がついたら使用期限を過ぎていた電池もあり、肌感覚では音の出力がいつもより弱く電池寿命も通常で10日程度もつはずが1週間ももちませんでした。
今思うと、10パックの特典は使用期限が近くなった売れ残りの空気電池だったのかもしれません。
空気電池をまとめ買いする時には使用期限を確認し、節度をもって購入することをおすすめします。
使用期限はパッケージの裏に使用推奨期限として記載されており、製造から約2~4年が目安です。
使用済み電池の処分には注意
使用済みの空気電池は、環境を保護するためにも一般の家庭ゴミとして処理することはできません。
電池を処分する場合は、プラス極とマイナス極の端子部分にセロハンテープを貼り付けて絶縁してから補聴器販売店などの回収缶に入れてください。
回収缶が置かれていない場合は、店舗スタッフに聞いてみてください。
参考に家電量販店や百貨店など、補聴器用の空気電池を販売している補聴器・メガネのブースや店舗がある場合は回収してもらうことが可能です。
筆者も大手家電量販店のビックカメラにある補聴器・メガネコーナーで数ヶ月分をまとめて引き取ってもらえました。
なお、お住まいの自治体によっては一般の乾電池などと同じく家庭ゴミ(資源ゴミ・不燃ゴミ)として出すことができる場合もあるため市区町村サイトなどで確認することをおすすめします。
補聴器用空気電池の効率的な使い方まとめ

補聴器専用の空気電池は、空気中の酸素に触れることで発電を起こす仕組みです。
補聴器本体と補聴器用の空気電池は、性質も保管方法もほぼ逆となります。
補聴器用空気電池の購入費用は、保険適用や補助制度の活用ができず医療費控除の対象にもなりません。
空気電池の使い方や保管方法を正しく理解し、効果的に長持ちさせていきましょう。
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