デフリンピックの原点や目的とは?聴覚障害者の手話や参加資格など競技ミニ知識・筆者の見解

デフリンピックの原点や目的とは?聴覚障害者の手話や参加資格など競技におけるミニ知識・筆者の見解

聞こえない・聞こえにくい人のための国際スポーツ大会、デフリンピック。

オリンピックやパラリンピックと同じく4年ごとに行われ、2025年は100周年の記念すべき大会です。

日本で初の開催となった東京2025デフリンピックが、11月15日から26日までに21競技が実施されています。

しかしデフリンピックがどういうきっかけで始まったのか何が目的なのか、具体的なことまでは知らない人も多いでしょう。

この記事ではデフリンピックの原点や目的、東京2025デフリンピックの概要や実施競技を紹介します。

手話や参加資格など意外と知られていないデフリンピックの競技ミニ知識、筆者の聴覚障害者としての見解も掲載しますのでご参考になれば幸いです。

目次

デフリンピックとは

デフリンピックという名称は「デフ」+「オリンピック」で組み合わせた造語で、デフ(Deaf)は英語で「耳が聞こえない」という意味です。

デフリンピックの原点・歴史

デフリンピック(Deaflympics)は、デフアスリート(耳が聞こえないスポーツ選手)を対象とした国際スポーツ大会です。

国際ろう者スポーツ委員会(ICSD)が主催し、オリンピックやパラリンピックと同じく4年に1度、夏季大会と冬季大会のそれぞれが開催されます。

そんなデフリンピックの原点は、1924年にフランスのパリで開催された国際サイレント大会(The International Silent Games)です。

オリンピックをめぐる社会的関心の高まりを活用して、聾者(ろう者)のためのスポーツ大会を開催しようとしたのがデフリンピックの始まりとされています。

国際サイレント大会は後の名称となる第1回デフリンピックで、2001年に国際オリンピック委員会から「デフリンピック」の名称を使用することが認められました。

デフリンピックの夏季大会は1924年、冬季大会は1949年にそれぞれ初めて開催され、1960年に始まったパラリンピックよりも古く長い歴史をもっているわけです。

デフリンピックができた理由

デフリンピックは、4年に1度の頻度で開催されている聴覚障害者のための世界規模の総合スポーツ競技大会です。

そんなデフリンピックができた大きな理由は、聾者のための国際的なスポーツ機会の創出です。

聾者だけが集まって競技を行う国際的な大会がなかったため、オリンピックを模範とした大会がつくられました。

デフリンピックを創設したのは、フランスのユジェーヌ・リュバン=アルケで聴覚障害者です。

聴覚障害者の社会的な地位向上と手話への理解促進を目的に、聴覚障害者が中心となって運営する国際的なスポーツ大会を提唱しました。

そこで1924年にパリで国際サイレント大会を開催し、これが後の名称となるデフリンピックです。

デフリンピックの目的・ビジョン

デフリンピックの目的や趣旨は、デフスポーツへの理解を広げるとともに障害の有無や性別、国籍などにかかわらずさまざまな違いのある人が互いに尊重し支え合う共生社会の可能性を世界に示すことです。

聴覚障害者のスポーツ振興や国際交流の促進、文化の発展を目的に、選手間のコミュニケーションを円滑にするための技術が開発されています。

また聴覚障害のあるアスリートが競技に集中し、最大限の力を発揮できる環境を整えるために「音」に頼らないルールが採用されています。

そして大会ビジョンとして掲げられているのは、以下の通りです。

  • デフスポーツの魅力や価値を伝え人々や社会とつなぐ
  • 世界に、そして未来につながる大会へ
  • 誰もが個性を活かし力を発揮できる、共生社会の実現

デフリンピック100周年記念は日本開催

今年2025年のデフリンピックは、1924年にフランス・パリで開催されてから100周年となる記念すべき大会です。

そんな100周年を迎える大会が東京2025デフリンピックで、日本では初めての開催になりました。

東京2025デフリンピックの概要

東京2025デフリンピックは世界の81ある国や地域などから史上最多3081選手がエントリーし、21競技209種目で熱戦が繰り広げられます。

正式名称第25回夏季デフリンピック競技大会 東京2025
(25th Summer Deaflympics Tokyo 2025)
略称東京2025デフリンピック
(TOKYO 2025 DEAFLYMPICS)
大会期間2025年11月15日~26日(12日間)
参加国70~80カ国・地域
参加者数約6,000人
競技数21競技・209種目

東京2025デフリンピックのコンセプト

東京2025デフリンピックでは、人々の繋がりを意味する「輪」がコンセプトです。

大会エンブレムには、デフコミュニティの代表的なシンボルである「手」を用いています。

デフリンピックを通して競技と話題に触れ、互いの交流やコミュニティが「輪」のように繋がった先には新たな未来の花が咲いていくことを表現したものです。

親指に添えた花は、国花である桜の花びらをモチーフにしています。

後述する高市早苗首相の画像で、親指に桜の花びらを添えた大会エンブレムが載っていますのでご参考ください。

公式サイト:東京2025デフリンピック

開会式で高市早苗首相がエール

デフリンピックの開会式には、高市早苗首相が出席しました。

そして障害の有無にかかわらず1人ひとりがもてる力を存分に発揮し、自ら選んだ道で夢を叶えられる社会を実現する決意を述べています。

同時にさまざまな困難を乗り越えて東京2025デフリンピックの舞台に立つ選手へ「存分に力を発揮し、日頃の成果を世界にお示しください。」とエールを送りました。

東京2025デフリンピックの競技

東京2025デフリンピックでは、陸上やバスケットボール、バドミントンをはじめ21種にわたる競技が行われます。

東京2025デフリンピックの競技一覧

東京2025デフリンピックで実施される競技は、以下の21競技です。

  • 陸上
  • バドミントン
  • バスケットボール
  • ビーチバレーボール
  • ボウリング
  • 自転車(ロード)
  • 自転車(マウンテンバイク)
  • サッカー
  • ゴルフ
  • ハンドボール
  • 柔道
  • 空手
  • オリエンテーリング
  • 射撃
  • 水泳
  • 卓球
  • テコンドー
  • テニス
  • バレーボール
  • レスリング(フリースタイル)
  • レスリング(グレコローマン)

競技のルールは、基本的にオリンピックやパラリンピックと同じです。

ただし耳の聞こえない人のために、光でスタートを知らせるフラッシュランプや動きで伝えるフラッグを使用するなど「目」で視覚的にわかるさまざまな工夫が整えられています。

東京2025デフリンピックの競技日程

東京2025デフリンピックの競技日程は、以下の表を参考にしてください。

スクロールできます
日程14金15土16日17月18火19水20木21金22土23日24月25火26水
開閉会式
陸上
バドミントン
バスケットボール
ビーチバレーボール
ボウリング
自転車(ロード)
自転車(MTB)
サッカー
ゴルフ
ハンドボール
柔道
空手
オリエンテーリング
射撃
水泳
卓球
テコンドー
テニス
バレーボール
レスリング(フリースタイル)
レスリング(グレコローマン)
日程14金15土16日17月18火19水20木21金22土23日24月25火26水

種目別の具体的な競技日・競技時間については、公式サイトで確認してください。

参考:東京2025デフリンピックの競技日程(種目別)

デフリンピックに関するミニ知識

デフリンピックに関して意外と知られていない、ちょっとしたミニ知識を紹介します。

デフリンピックの出場条件

デフリンピックに出場するアスリートには、決められた参加資格があります。

デフリンピックの選手における基本条件は3つあり、以下の通りです。

  • 補聴器や人工内耳を外した状態で聞こえる一番小さな音が55dBを超えること
  • 各国のろう者スポーツ協会に登録されていること
  • 各競技団体が定める記録や順位などの国内選考基準を満たしていること

dB(デシベル)とは音の大きさを表し、数字が大きいほど音が大きくなります。

55dBという数字は、人の話し声や会話が聞こえない大きさです。

通常の話し声や会話の大きさは60dBが基準のため、聞こえがよいほうの耳が55dB以上で聞こえない選手が対象となります。

競技中や練習中は、選手間の公平性を保つために補聴器や人工内耳が使用できないことになっています。

聞こえがよいほうの聴力が55dB以上というのは、例えば片耳がちょうど55dBでもう片耳が60dBであれば参加資格があるということです。

わかりやすい基準としては、たとえ片耳が55dBを超える重度難聴であってももう片方の耳の聴力が55dB未満であれば参加資格はありません。

音の大きさを表すdB(デシベル)や聴力については、下記記事もご参考ください。

ろう者スポーツ協会とは、日本では一般財団法人全日本ろうあ連盟にあたります。

日本国内における記録や順位などの選考基準は、全日本ろうあ連盟の公式サイトでは以下のように記載されています。

(1)当該年に開催されるデフリンピック競技大会の参加資格を満たしている者
(2)当該競技においてメダル獲得または入賞の可能性のある者
(3)わが国を代表する選手として推薦できる者(健康状態に問題がないこと、代表選手として不適切な行動がないこと、反社会的勢力との関わりがないこと他)
(4)上記の条件に加え、デフリンピック競技大会でのメダル獲得・入賞など将来的な活躍が期待できる次世代の者

参考:一般財団法人全日本ろうあ連盟

デフリンピックにしかない独自の競技

デフリンピックには、オリンピックやパラリンピックにはない競技があるのをご存知でしょうか。

デフリンピックにしかない競技は、オリエンテーリングとボウリングです。

オリエンテーリング地図とコンパスを使い、チェックポイントを正確に回ることを競う
ボウリング三角に並べられた10本のピンに向けてボールを転がして倒れたピンの数を競う

オリエンテーリングは、地図とコンパスを使って山野に設置されたコントロール(通過証明)を順番に通過してゴールに着くまでの速さを競う競技です。

道なき山野の地図を読むことで自らの力で進路選択する決定力や判断力、荒野や湿地などを走る身体的能力がトータルに要求されます。

ボウリングは、娯楽として知られている通り三角形に並べられた10本のピンに向けてボールを転がして倒れたピンの数を競う競技です。

1ゲームは10フレームで構成され1フレーム当たり最大2投が可能となり、1ゲームの最高得点は300点になります。

音に頼らないデフリンピックの競技方法

デフリンピックでは、21競技209種目の競技がオリンピックやパラリンピックと同じように実施されます。

しかし、耳の聞こえない選手たちがどうやって試合を繰り広げられるのでしょうか。

オリンピックやパラリンピックでも実施される競技は、音に頼らない競技の工夫がなされています。

笛やピストルを使わず、スタートランプや旗などの視覚的な合図で伝えます。

デフリンピックの選手たちは耳ではなく目で判断し、研ぎ澄まされたプレーを展開しているのです。

手話言語を必要とするデフリンピック

手話とは手指や身体の動き、表情、視線などを使って視覚的に意思を伝える言語です。

聴覚障害のある人の中でもとくに聾者にとって、手話は母語でありあらゆる情報の獲得とコミュニケーションの重要な手段となります。

デフリンピックでは、手話が重要なコミュニケーション手段として必要です。

選手同士やスタッフ、応援する観客などが互いに意思を伝え合うために手話が使われます。

手話通訳士も選手の指導や助言を伝えるなど、競技の現場を支えるために活躍しています。

競技中は光や旗など視覚的な合図が用いられますが、手話はデフスポーツの共通言語として選手間の意思疎通に不可欠です。

とくに団体競技では、音や声に頼らずに手話でのサインやアイコンタクトが連係プレーの要となります。

デフリンピックに対する筆者の見解

デフリンピックに対して、筆者が考える聴覚障害者としての見解を紹介します。

賛否両論ありますが、あくまで1人の聴覚障害者として述べているため共感や参考程度にしてください。

健常者・障害者・聴覚障害者を区別する壁

聴覚障害のある人に限定された国際スポーツ大会は、何のためにできたのか。

オリンピックと同時に開催されるパラリンピックがあるのに、なぜデフリンピックという聴覚障害者のスポーツとして分けたのか。

筆者はデフリンピックの存在を知っていましたが、まずその2点に疑問を抱いていました。

なぜデフリンピックができたのかについては、前述で説明した原点や目的に納得できているためここでは割愛します。

もう1つのオリンピック・パラリンピック・デフリンピックを分けたということについては、健常者・障害者・聴覚障害者を明確に区別するという意味合いにもとれます。

大会のビジョンとして、共生社会を実現するとしながらも実際は高い壁で仕切られているように感じるためです。

共生社会という定義は性別や年齢、国籍、そして障害の有無などにかかわらず多様な人が互いに人格と個性などの違いを認め合い、尊重し合いながら共に生きていく社会のことを指します。

誰もがその人らしい生活を送れるよう、共に支え合う全員参加型の社会を目指すという意味であるはずです。

例えばテニスの四大大会の1つとして有名なウィンブルドンテニス(全英オープンテニス)では、車いすテニスという競技がダブルスや男女混合と同じように種目・部門として実施されています。

今では日本人選手の活躍で注目を浴びるようになった車いすテニスですが、テニス競技という国際スポーツ大会の中に設定することで何ら違和感はないはずです。

そう考えると、パラリンピック競技もオリンピック競技の種目として組み入れることもできます。

健常者・障害者・聴覚障害者をわざわざ区別する必要があるのか、一部の聴覚障害者にはこの違和感を抱いているのではないでしょうか。

手話ができる・できないという壁

3点目としてもう1つ疑問に思ったことは、デフリンピックに出場するためには手話ができないと難しい点です。

前述の通り、デフリンピックでは選手間やスタッフ、応援する観客などが互いに意思を伝え合うために手話が使われ、競技の現場を支えるために手話通訳士も配置しています。

しかし聴覚障害者は全員、手話ができるわけではありません。

世界保健機関(WHO)や世界ろう連盟の資料によると、聴覚障害がある人は世界人口のうち約4億6,600万人で、そのうち手話を日常的に使う聾者(ろう者)は約7,000万人となっています。

厚生労働省などの統計資料によると日本国内の難聴者は約1,430万人いるとされ、聴覚・言語障害における身体障害者手帳を所有している人は約34万人です。

この約34万人いる聴覚障害者のうち、手話を日常的に使える人は18%程度といわれています。

つまり、聴覚障害者全体で見ると手話ができない人のほうが多い状況なわけです。

生まれた時から聞こえない聾者は、幼い頃から手話をコミュニケーション手段として生きてきたことは確かにいえます。

しかし口話(発話)による言語を身につけてきた聴覚障害者もおり、先天性難聴である筆者も手話ではなく言語訓練を優先に受けてきた1人です。

また元聴者であり、人生の途中から聞こえなくなった中途失聴者もほとんどが手話ができないといっても過言ではないでしょう。

聴覚障害者に限定した国際スポーツ大会としてのデフリンピックで、手話という条件や対話へのハードルを上げてしまっては限られた人数でしか参加できません。

もしかしたら、聾学校で手話を言語として習得してきた人たちのための国際スポーツ大会という趣旨だとしたら理解できます。

国際ろう者スポーツ委員会が主催していることからも、デフリンピックは聴覚障害者という広義での意味ではなく聾者のためのオリンピックといえるでしょう。

だからといって、手話を否定しているのではありません。

国際手話や日本手話、ジェスチャー、口話などがコミュニケーション手段として使われ、手話を通じたコミュニケーション文化の普及と理解促進につながるのはおおいに賛成です。

難聴の人や聴覚障害者に対する誤解については、下記記事もご参考ください。

参考:聴覚障害者の情報アクセシビリティ(2021年9月、総務省)

参考:平成25年版・障害者白書「障害児・者数の状況」(内閣府)

デフリンピックのあり方

デフリンピックが実態として聾者のためのオリンピックとはいえ、聴覚障害者を理解するためのスポーツ振興や国際交流を促す役割としてデフスポーツの認識度・知名度が広がることはもちろん歓迎です。

ただ偽善のもとに立っているのであれば、ありがた迷惑といえばいいのか肯定的に見ることはできません。

なぜなら聴覚障害のある人は、好き好んで障害を抱えているわけではないからです。

オリンピックとパラリンピックについても、否定的には捉えていません。

近年では、健常者のオリンピックよりも障害者のパラリンピックのほうが活躍が著しいことは事実です。

パラリンピックでのメダル獲得数も多いため、実績の度合いが明確にわかるのは素直に嬉しいことだと感じています。

デフリンピックの意義まとめ

デフリンピックは、耳が聞こえない・聞こえにくい聴覚障害者のためのオリンピックです。

厳密にいうと聾者のためのオリンピックですが、難聴者や聴覚障害者でデフリンピックのことを知っている人はどのくらいいるでしょうか。

とくに人生の途中で聴力を失った中途失聴者の中には、元選手だったかもしれない人も含めて、せっかく競技の実力があるのにデフリンピックの存在や条件を知らない人が多くいます。

もし選手レベルで出場資格があったとしたら、その能力を活かせないことは非常にもったいないことでデフスポーツ界にとっても機会損失でしょう。

健常者にとってのデフリンピックは、パラリンピックより認知度は低く関心もないかもしれません。

それでもデフスポーツへの理解を広げるとともに障害の有無や性別、国籍などにかかわらず互いに尊重し支え合う共生社会の可能性を実現できることを願っています。

聴覚障害者の立場であるとともにSEOを重視するWeb制作者として、本記事を投稿することで少しでも多くの人に読んでいただきデフスポーツへの理解や発展につながれたら幸甚です。

以下の記事では、難聴者・中途失聴者・聾者(ろう者)の違いと共通点について説明していますので併せてお読みください。

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この記事を書いた人

つむぎのアバター つむぎ クリエイター

重度難聴で耳あな型補聴器を装用
聴覚障害者として身体障害者手帳3級を所有
本業・副業ともにWebを中心としたデザイン制作

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