平衡感覚と難聴の関係は?耳・目・筋肉による働きや仕組み、異常が起こる原因・対策

平衡感覚と難聴の関係は?耳・目・筋肉による平衡感覚への働きや仕組み、平衡感覚が乱れる原因・対策

平衡感覚を正常に保つには何が必要なのか。

身体のバランスは耳奥にある内耳からの情報に、目からの視覚情報と筋肉からの体性感覚が加わることで維持される仕組みです。

つまり難聴や聴覚障害など耳内に異常が起きると、めまいやふらつきなどの症状を引き起こしやすくなります。

この記事では、平衡感覚の仕組みや異常が起きる症状に触れながら難聴との深い関係について解説します。

身体のバランスに異常が起こる原因や対策ケアも紹介しますので、平衡感覚の乱れを予防・改善するご参考になれば幸いです。

目次

平衡感覚とは

人間が身体のバランスをとるには、耳からの情報・目からの情報・筋肉からの情報という3つの情報が使われています。

ここでは、まず基本的に平衡感覚とは何かについて説明します。

平衡感覚の特徴

平衡感覚とは、体や頭の位置・傾き・動きなどを感知し身体のバランスを保つための感覚・機能です。

主に耳奥の内耳にある「前庭」と「三半規管」という器官が直線的な動きや回転を感知し、脳が視覚や体性感覚といった情報を統合して処理します。

耳の器官働き
前庭(ぜんてい)頭の傾きや重力、直線的な加速度を感知する
三半規管(さんはんきかん)3本の管が身体の回転運動を感知する

詳しくは後述しますが、平衡感覚は耳からの感覚情報・目からの視覚情報・筋肉からの体性感覚を統合する脳によって成り立っています。

平衡感覚を保つ仕組み

私たちが転ばずに立ったり歩いたりできるのは、以下の通り3つの情報が連携しているためです。

スクロールできます
部位器官機能・働き
前庭
三半規管
位置や傾き、回転、加速を感知する
視覚周辺の見える景色・情景から身体の位置や傾きを判断する
筋肉体性感覚足裏の感覚や筋肉の緊張で位置や状況を認識する

耳(前庭・三半規管)

耳奥にある内耳が平衡感覚を保つのに最も重要な役割を果たしています。

前庭で身体の傾きを、三半規管で回る・曲がるといった身体の回転を感知します。

例えば遊園地のコーヒーカップで回転しても目が回らない、エレベーターの昇降で加速・減速を感じ取るのも耳からの情報です。

目(視覚)

目から得る視覚情報は、自分の行動で位置が変わっても周囲の景色を捉え続ける役割があります。

走る時に頭が上下左右に揺れても景色がブレずに見えるのは、視覚が耳の前庭と連携して網膜上の像を固定しているためです。

また目を瞑った状態で片足立ちが難しくなるのも視覚情報がなくなるために生じます。

筋肉(体性感覚)

筋肉の体性感覚は、足裏など筋肉が受けた外部刺激や身体の運動・位置情報を把握します。

足裏で地面の傾きを感じたり触れたものの硬さを感じたり、筋肉や関節がどれくらい伸び縮みしているかを感知したりするなどです。

この体性感覚があることで、目を瞑っていても自分の手足がどこにあるのか・どう曲がっているかを把握できるわけです。

前庭+三半規管による感覚情報・目による視覚情報・筋肉による体性感覚が合わさった3つの情報が脳の小脳にまとめられることで全身に指示を出します。

例えば身体が左側に傾いているから右側の筋肉を少し強めて戻そうといった指示が全身に送られることで姿勢が保たれるほか、真っすぐに立ったり転ばずに歩いたりする反射的なコントロールを可能にしているのです。

平衡感覚が乱れる症状と原因

身体のバランスを保つ平衡感覚が乱れると、どういう症状が現れるのでしょうか。

平衡感覚の異常が起こる原因として考えられることはどんなことでしょうか。

平衡感覚の異常が起きると

平衡感覚は、耳・目・筋肉から検知した3つの情報を脳で1つにまとめられることでバランスを維持できます。

しかし場合によっては、耳内に異常が現れたり脳内に情報が正しく伝わらなかったりすることもありえます。

3つある情報から1つでも一致しなくなると、めまいやふらつき、乗り物酔いといった症状が生じるのです。

めまいやふらつきはぐるぐる回ったりふわふわしたりする症状で、とくに耳奥にある内耳の問題が多いとされています。

乗り物酔いは、目で見る情報と耳で感じる揺れが一致せず脳が混乱することで起こります。

平衡感覚の異常が起こる原因

平衡感覚の異常が起こる原因はさまざまですが、主に以下の通りです。

内リンパ水腫

内リンパ水腫は、いわゆる内耳の水ぶくれです。

内耳のリンパ液を生成する力と吸収力のバランスが崩れることでリンパ液が過剰になる状態です。

内リンパ水腫を発症することにより平衡感覚を司る三半規管と聴覚の要である蝸牛に障害が起き、めまいや難聴、耳鳴りが生じます。

脱水

人間の身体は成人の場合、体重の約60%(新生児は約80%)が水分です。

脱水になると、身体は水分を維持しようとするため排尿を抑制します。

結果的に、内耳で水分が過剰になるという悪循環を招くのです。

気圧やストレス

梅雨・台風などによる気圧の変化、ストレスや疲労も内リンパ水腫を誘発する原因となります。

難聴と平衡感覚の関係

図解・平衡感覚と内耳の関係(難聴と平衡感覚はどちらも内耳という共通の器官が司っているため密接に関係する)

難聴と平衡感覚は、どちらも耳奥にある内耳という共通の器官が司っているため密接に関係しています。

平衡感覚に関連する内耳の特徴

耳奥にある内耳には、音を伝える「蝸牛」とバランスを保つ「三半規管」があります。

耳の器官働き
蝸牛(かぎゅう)音を伝える働き
三半規管(さんはんきかん)バランスを保つ働き

蝸牛

音を伝える働きがある蝸牛はリンパ液で満たされており、音を伝える神経細胞である有毛細胞が並んでいます。

外部から入った音の振動がリンパ液に伝わって有毛細胞を刺激すると、電気信号を発生して脳に伝わり音として認識される仕組みです。

三半規管

バランスを保つ働きがある三半規管もリンパ液で満たされています。

三半規管内にあるリンパ液が動いて電気信号を発信して脳に伝わり、身体のバランスを保つように脳から全身の筋肉に指令が送られる仕組みです。

聴覚の蝸牛と平衡感覚の三半規管は隣接しており、リンパ液でつながっています。

どちらか一方の異常が起こると、もう一方に波及しやすい性質です。

難聴による平衡感覚の異常

難聴による平衡感覚の異常は、耳奥にある内耳の機能障害に起因することが多いです。

耳は入り口から外耳・中耳・内耳の3つに分けられ、音を伝達する蝸牛とバランスを保持する三半規管があります。

蝸牛と三半規管ともに一番奥の内耳にあり隣り合っているため、どちらかに問題が起こるともう一方にも影響を及ぼすようになっている仕組みです。

炎症や循環障害、腫瘍など何らかの異常や障害が生じると、症状として難聴や耳鳴り、めまいを引き起こします。

詳しくは後述しますが、内耳における代表的な病気にはメニエール病や突発性難聴などが挙げられます。

筆者の平衡感覚について

生まれつき難聴である筆者も、聴力低下が進行するにつれて平衡感覚が乱れつつあります。

めまいやふらつきなどは今のところありませんが、とくに平衡感覚の異常を感じるのが下り階段です。

段差につく際の足元が安定せず、地面がないかのようにすーっと下がっていくような感覚に陥ることがあります。

なお、歩道をまっすぐ歩くことや目を閉じた状態の起立は問題なくできています。

重度の難聴でも平衡感覚による大きな危険性がないのは、両耳の聴力差があまりないからかもしれません。

平衡感覚の異常は片耳難聴に多く、どちらかの耳が調子悪い時に乱れやすくなると感じています。

筆者の聴力レベルについては、下記記事をご参考ください。

難聴と平衡感覚に関する主な疾患

難聴を伴う平衡感覚の異常は、耳の奥にある内耳を満たすリンパ液が増えすぎる内リンパ水腫が原因であることが多いです。

代表的な症例として、主にメニエール病や突発性難聴などの疾患が挙げられます。

ここでは、難聴と平衡感覚に関連する主な疾患と症状を紹介します。

メニエール病

メニエール病は、内耳のリンパ液が過剰になる内リンパ水腫が原因で難聴・耳鳴り・めまいの3つの症状を繰り返す病気です。

難聴やめまいによる初めての受診ではメニエール病という診断はされない傾向が多く、突発性難聴との区別が難しい場合があります。

軽い症状の場合は耳の閉塞感を自覚する程度ですが、重い症状となると回転性のめまいが起こり1日のうちでも症状の変動が大きく繰り返されることが特徴です。

突発性難聴

突発性難聴はある日突然、耳が聞こえなくなる症状です。

片方の耳に起こる感音難聴の1つで、めまいやふらつきを伴います。

はっきりとした原因はわかっていなく急に発症する感音難聴のうち、原因不明のものを突発性難聴と診断されます。

加齢性難聴

加齢性難聴は、年を重ねるとともに聞こえにくくなっている症状です。

加齢による内耳機能の低下により難聴とふらつきを感じるため、とくに高齢者には転倒のリスクが高まります。

個人差がありますが、聴覚に関わる細胞の減少や老化により通常は50歳を超えると聴力が急激に低下する傾向があります。

聴神経腫瘍

聴神経腫瘍は、聴神経のうち平衡感覚を司る前庭神経から発生する良性の脳腫瘍です。

主な初期症状は片耳の難聴や耳鳴りで、腫瘍が成長していくと徐々にめまいやふらつきが現れます。

腫瘍が小脳を圧迫するまで大きくなると難聴とふらつきが進行し、顔面神経麻痺や歩行障害が生じる傾向が高いです。

聴神経腫瘍は10万人に1人程度に発生しており、早期発見と治療が重要になります。

良性発作性頭位めまい症(BPPV)

良性発作性頭位めまい症は、三半規管の異常によりめまいが生じる症状です。

内耳の耳石器から剥がれ落ちた耳石が三半規管に迷い込み、頭の位置を変えた際に強い回転性めまいを引き起こします。

寝返りや寝起きなどで平衡感覚が一時的に混乱し、ぐるぐると回るような感覚や吐き気を伴うことが多いですが、通常は数日で自然に改善する良性の疾患です。

平衡感覚の対策ケア

平衡感覚の対策ケアとして理想的なのは、主に以下の通りです。

適度な水分補給

めまいやふらつき、回転性めまいといった平衡感覚の乱れは、体内の水分不足(脱水症)が原因で引き起こされることが多いです。

内耳の三半規管が正常に機能するには適切な水分量が必要なためです。

また、脱水は血液の粘度を上げ内耳の血液循環を悪化させます。

そのため、適度にこまめな水分摂取が内リンパ水腫の予防にも役立ちます。

水分だけでなくナトリウムなどの電解質が不足すると脱水やめまいが起こるため、スポーツドリンクや経口補水液、適量の塩分を含む飲み物を利用することも有効です。

ただし、水分の摂り過ぎも逆効果となります。

平衡感覚を保つための水分補給は重要ですが、水を飲みすぎると血液中の塩分(ナトリウム)濃度が低下し水中毒(低ナトリウム血症)を引き起こす可能性が高いです。

短時間に大量の水を飲むと、身体が処理しきれず逆に頭痛やめまい、吐き気などの症状が生じることがあるため適量を心がけてください。

三半規管を鍛える

平衡感覚を司る三半規管の機能が低下すると平衡感覚の乱れが起こります。

平衡感覚を緩和・改善するには、ブランコやトランポリンといった軽い運動で三半規管を刺激することが有効です。

道具を使わずに室内でできる例として、片足立ちや後ろ歩き、前転・後転、首の上下・左右運動などで三半規管を鍛えられます。

首の上下・左右運動は、グーサインをした腕を前に伸ばし、立てた親指を見つめながら首を上下・左右に振る運動(首振り運動)です。

仰向けから左右に寝返りを打つ動作(寝返り運動)や目を開けたまま・閉じたままの足踏みや踏み台昇降も三半規管の機能回復・強化に効果的とされています。

生活習慣の改善

内リンパ水腫は、気圧の変化やストレス・疲労で引き起こすことがあります。

天候による気圧の変化には対処しようがありませんが、十分な睡眠をとったりストレスをできるだけ解消したりするなど規則正しい生活が重要です。

睡眠不足はめまい・ふらつきの原因となるため、しっかり休養をとることで緩和できます。

自律神経の乱れは三半規管への血流量を低下させるため、ストレスを溜めないような工夫で三半規管周辺の血流を促すことが予防につながります。

耳鼻咽喉科の受診

内リンパ水腫は、内耳のリンパ液が過剰になることで引き起こす症状です。

耳鼻咽喉科などの医療機関を受診し、余分な水分を放出する利尿剤のほか血流改善薬やビタミン剤などを処方してもらうことで改善できます。

また、激しいめまいや突然の難聴は早期診察・治療が必要です。

とくに耳が詰まったような閉塞感を伴う低い音の難聴が生じている場合は、早めに耳鼻咽喉科を受診しましょう。

3つの情報で成り立つ平衡感覚まとめ

身体のバランスいわゆる平衡感覚を正常に保つには、耳からの情報・目からの情報・骨や筋肉からの情報の3つが使われています。

耳奥にある内耳からの情報に、目からの視覚情報と骨や筋肉からの体性感覚が加わることでバランスが維持される仕組みです。

この3つある情報のうち、1つでも異常や障害が生じると平衡感覚の異常が起こります。

つまり難聴や聴覚障害の原因が内耳にある場合には、めまいやふらつきなど平衡感覚の異常が起こりやすいわけです。

バランス感覚は、年を重ねるとともに耳内部の老化によって低下しやすくなります。

平衡感覚をできるだけ保つためにも軽い運動などで三半規管を刺激したりすることが有効です。

以下の記事では、耳鳴り音の種類から考えられる原因や難聴との関係について解説していますので併せてお読みください。

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この記事を書いた人

つむぎのアバター つむぎ クリエイター

重度難聴で耳あな型補聴器を装用
聴覚障害者として身体障害者手帳3級を所有
本業・副業ともにWebを中心としたデザイン制作

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