
難聴の人や聴覚障害のある人に発生することの多い耳鳴り。
それでも音のしない静かな環境下では、実は誰でも耳鳴りを感じていることをご存知でしょうか。
耳鳴りは非常に小さな音のため、普段通りの生活では周囲の音にかき消されてほとんど気づきません。
しかし、耳鳴り音の種類によって原因や隠れている病気がわかることもあるのです。
この記事では耳鳴りとは何か、基本特徴に触れながら耳鳴りが起こる仕組みや理由を説明します。
耳鳴り音の種類による原因・病気や難聴との関係、重度難聴である筆者の耳鳴りについても紹介しますので、日常を過ごす上で耳鳴りの予防や改善につながるご参考になれば幸いです。
耳鳴りとは
耳鳴りは、外からの音源がないにもかかわらず音が聞こえる感覚のことを指します。
耳鳴りの基本特徴
耳鳴りとは、実際に音が鳴っていないのに耳内でさまざまな音が聞こえる現象です。
周囲が静かになった途端に音が気になるような耳鳴りもあれば、顔をしかめたくなるほど辛い耳鳴り、1日中悩まされるといった重い耳鳴りもあります。
耳鳴りといっても、種類や程度、頻度はさまざまです。
音の種類としては「キーン」「ザー」といった音質があり、片耳だけ鳴ったり両耳ともに鳴ったりすることもあります。
耳鳴りのほとんどは、自分だけに聞こえていて周囲の人には聞こえません。
一時的に起こる耳鳴りもあれば、慢性的に続く耳鳴りもあります。
耳鳴りがする人の実態
多くの医療機関が公表する資料によると、日本人の約4人に1人が慢性的な耳鳴りに悩んでいるといわれています。
とくに、高齢者ではその割合が高く患者数は増加傾向です。
また難聴症状がある人のうち、およそ30~40%が耳鳴りの症状を併せもっているという実態調査もあります。
他に、大音量のライブやコンサート後に一時的な耳鳴りが起こることがあります。
しかし加齢による難聴や突発性難聴などといった疾患が原因の場合には、耳鳴りが長期間続くことも多いです。
周囲で実際には音がしていないのに高音の雑音が聞こえたり耳が詰まったような感覚があったり、さらにはめまいを伴うこともあります。
耳鳴りが起こる仕組み・理由

耳鳴りは音源がないのに聞こえる「幻の音」で、音の強さや音質・音程は人それぞれです。
耳鳴りが生じる仕組み
耳鳴りは鼓膜だけではなく耳の奥にある内耳や聴神経、脳で起きており、その多くは難聴を伴います。
耳鳴りは耳ではなく脳から
耳鳴りは「耳」ではなく「脳」で起きています。
その大きな要因は、耳から脳へ音を伝える聴覚路の障害です。
聴覚路の障害によって音の信号が音を感じる脳の聴覚野に届きにくくなると、脳の働き方が変化し耳鳴りが生じます。
つまり耳鳴りは、耳内の障害をきっかけに脳の中で起こっている現象なのです。
耳鳴りは実は誰にでも起きる
周辺がまったく音のしない静寂の中では、実は誰でも耳鳴りを感じているといわれています。
通常では非常に小さな音のため、日常生活の中では周囲の音や声にかき消されて気づかないことがほとんどです。
しかし耳から脳へ音を伝える聴覚路に異常や障害があると、脳の働きが変化し今まで気づかなかった小さな耳鳴りが強く聞こえてくるため自覚できる耳鳴りとして現れてくるのです。
耳鳴りが起こる理由
耳鳴りの多くは、鼓膜の周辺ではなく耳奥の内耳や聴神経、脳で起きています。
耳鳴りの具体的な原因や疾患については後述しますが、主に疲れやストレス、睡眠不足、騒音、加齢などです。
そのほとんどは、重大な病気の原因になったり命が危険にさらされたりすることはありません。
しかし突発性難聴やメニエール病、中耳炎などの疾患でも耳鳴りがすることもあるため、耳鳴りがひどい場合には耳鼻咽喉科の診察を受けることも必要です。
耳鳴り音の種類と考えられる原因・病気
耳鳴りといっても音の感じ方は人それぞれです。
しかし耳鳴り音の種類や性質によって原因が異なり、隠れている疾患がわかることもあります。
- 高音性(高周波音):キーン、ピーなど
- 低音性(低周波音):ブーン、ゴーなど
- 拍動性:ドクドク、ズンズンなど
- その他の音:ガサガサ、ポコポコなど
- 耳鳴り音の種類による原因早見表
- 両耳・片耳で起きる耳鳴りの原因
高音性(高周波音):キーン、ピーなど
高音性は、高周波の音で「キーン」「ピー」「ジー」などといった金属音や電子音のような高い音が持続的に聞こえる耳鳴りです。
高音性の耳鳴りがする人は、難聴に伴うことが多いとされています。
主な病気・疾患として加齢性難聴や突発性難聴、聴神経腫瘍などですが、ストレスや脱水が原因となっていることも多いです。
耳鳴りは難聴のサインであることが多く、長く続くようであれば耳鼻咽喉科での受診が推奨されます。
低音性(低周波音):ブーン、ゴーなど
低音性は、低周波の音で「ブーン」「ゴー」「ザー」「ボー」といったボイラーの音やトンネルの通過時に似た耳鳴りです。
低音性の耳鳴りがする人は、耳内の血流に異常があったり耳管がトラブルを起こしたりしている可能性があります。
主な病気・疾患にはメニエール病や耳管狭窄症の可能性がありますが、ストレスや気圧の変化でも低い音の耳鳴りが起きることが多いです。
拍動性:ドクドク、ズンズンなど
拍動性は、鼓動のように脈打つ音で「ドクドク」「ズンズン」といった脈拍に似たリズムのある耳鳴りです。
脈拍と一致していることから、動静脈瘻など血管の異常が原因の可能性があります。
他に、高血圧や脳腫瘍が疑われることもあるそうです。
その他の音:ガサガサ、ポコポコなど
他にも「ガサガサ」「ゴソゴソ」と何かが隠れているような音、「ブクブク」「ポコポコ」といった動いているような音もあります。
稀に「ヒューヒュー」といった口笛のような音、「ゴーッ」という波のような轟音、メロディーが流れるようなハミングも耳鳴りの一種です。
耳垢が詰まっていたり筋肉が痙攣していたりする可能性が高く、中耳炎の原因とされることもあります。
他に思ってもいない病気が隠れていることもあるため、耳鳴りのサインに注意するとよいでしょう。
耳鳴り音の種類による原因・病気早見表
上記に挙げた事例を含め耳鳴り音の種類による原因を早見表にしましたので、耳鳴りの音質から考えられる原因や病気を見つける参考にしてください。
| 音の種類 | 主な音質の例 | 考えられる原因・病気 |
|---|---|---|
| 高い音 | 「キーン」「ピー」 | 加齢性難聴、突発性難聴、聴神経腫瘍、ストレス |
| 低い音 | 「ブーン」「ゴー」 | メニエール病、耳管狭窄症、ストレス、気圧の変化 |
| 拍動音 | 「ドクドク」「ザーザー」 | 高血圧、血管の異常、動静脈瘻、脳腫瘍 |
| その他(1) | 「ガサガサ」「ポコポコ」 | 耳垢の詰まり、筋肉の痙攣、中耳炎 |
| その他(2) | 「ウォンウォン」(モーター音) | 自律神経の乱れ |
| その他(3) | 「ヒューヒュー」(口笛の音) | OA機器症候群 |
| その他(4) | 「グァングァン」(洗濯機の音) | 脳卒中 |
| その他(5) | 「ゴー」(ジェット音) | 脳梗塞 |
他にも「ウォンウォン」といったモーター音が聞こえる場合は自律神経の乱れ、「ヒューヒュー」という口笛のような耳鳴りはOA機器症候群という事例もあります。
さらに「グァングァン」といった洗濯機のような音は脳卒中、「ゴー」というジェット音は脳梗塞が疑われることもあり、耳鳴り音の種類による原因や疾患はさまざまです。
上記はあくまで1つの目安として、耳鳴りが長く続いたり音が変わったりする場合には病気への危険信号だと捉え耳鼻咽喉科での受診をおすすめします。
両耳・片耳で起きる耳鳴りの原因
耳鳴りには、両耳で起こる場合と片耳で起こる場合があります。
両耳で聞こえる耳鳴り
最も多く見られるのが両耳での耳鳴りです。
両耳で同時に「キーン」「ブーン」と鳴るのが特徴で、主な原因として難聴や高血圧、甲状腺の異常、血流障害など全身的な要因が考えられます。
片耳だけで聞こえる耳鳴り
片耳だけに耳鳴りを感じるのは比較的稀な症状です。
主な原因として耳垢の詰まりや中耳炎、頭部の外傷など主に身体の一部に問題が見られます。
重大な病気のサインを示すこともあるため、片耳での耳鳴りが続く場合は速やかに耳鼻咽喉科で受診しましょう。
耳鳴りと難聴の関係
耳鳴りの大きな原因の1つに挙げられるのは、実は 「難聴」 です。
難聴による耳鳴りの特徴
耳鳴りに悩む人の約90%は、難聴の症状も併せもっているといわれています。
難聴と耳鳴りは密接な関係にあり、難聴の人のうち約30~50%が耳鳴りを伴うとされているのです。
日本国内では、およそ300万人(人口の2~3%)の人が耳鳴りに苦しんでいると推定されます。
耳鳴りのせいで聞こえが悪くなったのかと感じる人も多く見られますが、正確にいうとその逆です。
難聴や聴力低下は耳鳴りが原因で引き起こすのではなく、難聴の疾患が原因となって耳鳴りが生じています。
つまり、耳鳴りは難聴のサインであることが多いということです。
そのため、難聴の人や聴覚障害のある人は耳鳴りとうまく付き合っていくことが重要です。
難聴による耳鳴りの原因
すでに耳鳴りが起きている場合には、生活習慣や環境による原因が症状を強めることがあります。
以下の生活習慣や環境に心当たりがある人は、耳鳴りを少しでも和らげるための参考にしてください。
- 喫煙
- アルコール
- カフェイン(コーヒー・お茶・エナジードリンクなど)
- 塩分過多や高脂肪食など血流に影響を与える食品
- ストレス
- 疲労・睡眠不足
難聴による耳鳴りの対策ポイント
難聴による耳鳴りの対策ポイントは、以下の通りです。
- 大きな音を避ける
- イヤホンの長時間利用や大音量使用を避ける
- 耳栓や防音マフを活用する
- 血圧や血糖値を適切にコントロールする
- 禁煙や節酒を心がける
- 十分な休養とストレスケア(深呼吸・マインドフルネスなど)
騒音などの大きな音を聞き続けると騒音性難聴、イヤホンやヘッドホンで大音量の音声を聴き続けることでヘッドホン難聴という症状になる可能性もあります。
騒音性難聴やヘッドホン難聴については、別記事で紹介します。
難聴の耳鳴り音は高音性
耳鳴りは難聴のサインでもあるとされています。
前述の通り、難聴に伴う耳鳴りの音質は「キーン」「ピー」といった高音が多いです。
加齢性難聴や突発性難聴、聴神経腫瘍などといった耳疾患も高い音での耳鳴りが起きることがあります。
他に疲労や睡眠不足、ストレスなどの場合にも一時的に「キーン」「ピー」など高音域の耳鳴りが聞こえる傾向です。
耳鳴りがすぐに治まる場合には心配ありませんが、長期間続く状態や辛く感じる場合には病状が発覚する可能性も考えて耳鼻咽喉科を受診しましょう。
筆者の耳鳴りについて
筆者は幼少・学生時代に耳鳴りがしていたかどうか記憶にありませんが、改めて振り返ってみると周囲には何もないのに後ろで何か音が鳴ったり脳内でささやき声が聞こえたりすることがありました。
いわゆる、幻聴に近い音です。
難聴が進行するにつれて、次第に耳鳴りが起こる頻度は増えています。
重度の難聴ともなると耳鳴りの度合いも強くなり、高音や低音だけでなく警報アラームのような音やメロディーが流れる音まで聞こえてくることが多いです。
前述の通り耳鳴りは誰にでも起こる現象ですが、耳内の障害が生じることで耳鳴りの大きさ・強さは増していきます。
難聴や聴覚障害による耳鳴りを改善することは不可能に近いことを理解しているため、耳鳴りとうまく付き合っていくことが重要です。
それでも前述の原因や対策ポイントに注意しながら、できるだけ耳鳴りの大きさや強さ、発生頻度を緩和する工夫をしています。
耳鳴りからの危険信号まとめ
日常を過ごす上で普段からは違和感を感じないものの、耳鳴りは耳内や脳内に何らかの異常や障害があった時に起こる現象です。
耳鳴り音の種類によってはメニエール病や中耳炎など耳の疾患だけでなく、脳卒中や脳梗塞といった重大な病気が潜んでいる可能性もあります。
また難聴の人や聴覚障害のある人は、原因となる要素を改善したり対策できることは心がけたりしながら耳鳴りとうまく付き合っていくことが重要です。
いつもは聞こえないはずの耳鳴りや普段聞こえる耳鳴りとは違う音が続いたら。
身体が知らせる何らかの危険信号(サイン)だと捉えて、念のため耳鼻咽喉科を受診しましょう。
以下の記事では、難聴の種類と症状、主な原因について解説していますので併せてお読みください。

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