
障害のある人でも取得できる運転免許。
普通自動車免許を取得するにあたって、障害者向けに必要な教習費用の一部を助成する制度が実はあるのをご存知でしょうか。
お住まいの自治体によって条件はさまざまですが、基本的に障害者手帳を所有していれば免許取得のための費用助成を受けることが可能です。
この記事では、障害者の運転免許取得における助成制度について解説します。
障害者が自らの運転で移動できるために、運転免許の取得に向けて教習にかかる費用負担を軽減するご参考になれば幸いです。
障害者の自動車運転免許取得費助成とは
総務省の資料によると、自動車運転免許を取得する障害者を対象に教習費用の一部を助成する制度があります。
それが、障害者自動車運転免許取得費助成事業です。
障害者自動車運転免許取得費助成事業の概要・目的
障害者自動車運転免許取得費助成事業は、障害者総合支援法第77条の規定に基づいて障害者が自立した日常生活または社会生活を営むことができるように設けられた助成制度です。
各自治体(市区町村)が2006年より実施する地域生活支援事業の1つで、障害のある人が自動車運転免許を取得するために必要な費用の一部を助成します。
国は予算の範囲内で、都道府県および市区町村が支出する地域生活支援事業の費用の100分の50以内を補助することができるとしています。
負担割合は、国が50%、都道府県が25%、市区町村が25%です。
なお障害者自動車運転免許取得費助成事業にかかわる財源については、2016年度から地方交付税が充てられています。
参考:障害者自動車運転免許取得費助成事業の適切な運用について(総務省)
参考:市町村障害者社会参加促進事業の実施について(厚生労働省)
障害者総合支援法とは
障害者総合支援法は、障害をもつ人が日常生活や社会生活を送る上で必要な支援を受けられる法律です。
2013年(平成25年)4月1日に施行された福祉法で、もともとあった「障害者自立支援法」を障害者の日常生活および社会生活を総合的に支援するための法律として「障害者総合支援法」に改称しました。
障害者総合支援法の詳細については、下記記事をご参考ください。

障害者総合支援法第77条の内容については、以下のリンクより閲覧できます。
参考:障害者総合支援法 第77条<市町村の地域生活支援事業>
障害者でも運転免許の取得が可能?
その前に障害のある人が、本当に運転免許の取得ができるのかという疑問を抱く人も多いでしょう。
実は、自動車や二輪車(オートバイ)の運転にあたって障害のある人でも免許を取得可能です。
筆者も普通自動車免許を取得し、ペーパードライバーでありながら現在も運転免許証を身分証明書代わりに所有しています。
従来は条件付きで普通自動車免許しか取得できませんでしたが、2012年の道路交通法改正により聴力にかかわる適性検査が廃止されたことで二輪車の運転免許取得も可能です。
以下の記事では、難聴や聴覚障害のある人における運転免許の取得について解説していますので参考にしてください。

自動車運転免許取得費助成の条件
では、自動車運転免許取得費の助成を受けるにはどんな条件があるのでしょうか。
自動車運転免許取得費の助成条件はお住まいの自治体によって異なるため、ここでは例として市区における情報をいくつか紹介します。
自動車運転免許取得費の助成対象
助成対象の参考例として、いくつかの市区における助成対象を紹介しますので比較してみてください。
東京都S区の場合
東京都S区での助成対象は、基本的に18歳以上の身体障害者で運転免許試験場の適正試験に合格しており次のいずれの要件にも該当する人です。
- 身体障害者手帳1~3級(内部障害は4級以上で歩行困難な人、下肢・体幹機能障害は4級・5級で歩行困難な人も含む)
- 申請をする日の3ヶ月前から引き続きS区内に住所を有していること
- 申請者本人の前年の所得税の年額が40万円以下
- 他の制度により免許の取得に要する費用の助成を受けていないこと
神奈川県K市の場合
神奈川県K市での助成対象は、K市内に居住し次のいずれかに該当する人です。
- 身体障害者手帳1~4級をもっている人
- 療育手帳A1~B2をもっている人、または障害者更生相談所・児童相談所において知能指数75以下と判定された人
- 精神障害者保健福祉手帳1~3級をもっている人
上記の通り障害者手帳の種類や等級のほか、所得制限など自治体によって助成対象が異なるのがわかります。
そのため、運転免許の取得にあたって教習費用の助成を受けたい障害当事者はお住まいの市区町村サイトや福祉窓口で助成対象を確認してください。
自動車運転免許取得費の助成額
助成額の参考例として、いくつかの市区における助成額を紹介しますので比較してみてください。
東京都S区の場合
東京都S区では、入校料や技能・学科教習料、教材費など教習所にかかる費用のうち最高144,200円、所得税非課税の人は164,800円まで助成されます。
また、普通車の限定解除に要する費用については20,600円までです。
神奈川県K市の場合
神奈川県K市では、自動車教習所で免許を取得する場合に技能教習に必要な費用の3分の2を助成します。
ただし助成額は、100,000円以内です。
埼玉県K市の場合
埼玉県K市で助成対象となる経費は、公安委員会指定の自動車教習所で教習を受けるために要する入学金・教習料・教習コース使用料・技能検定料および受験料です。
交付限度額は、120,000円となります。
上記の通り、自治体によって助成額が異なるのがわかります。
助成対象となる運転免許
助成対象となる運転免許の種類も自治体によって異なりますが、一般には第一種運転免許になります。
参考例として神奈川県K市で助成対象となる運転免許は、以下の通りです。
- 大型自動車免許
- 中型自動車免許
- 準中型自動車免許
- 普通自動車運転免許
- 大型特殊自動車免許
- 大型自動二輪車免許
- 普通自動二輪車免許
自治体によって助成対象とする運転免許の種類が異なりますので、お住まいの市区町村にある福祉窓口で確認してください。
助成の申請手続きから交付までの流れ
自動車運転免許取得費助成の申請手続きに必要なものは何か、申請手続きから助成を受けるまでどんな手順を踏んだらいいのでしょうか。
申請手続きに必要なもの
申請に必要な書類などは、一般に以下の通りです。
- 障害者手帳
- マイナンバーの確認ができる書類
- 適正試験(運動能力)の結果を示した書類
- 教習所の必要経費がわかるパンフレットなど
自治体によっては前年の所得税額を証明するものや技能試験合格証明書などが必要な場合もありますので、事前に市区町村の窓口で確認しましょう。
申請手続きから助成までの手順や流れは自治体によって異なりますが、一般例として以下を参考にしてください。
申請手続きから助成までの手順・流れ
申請手続きから助成までの手順・流れは、以下の通りです。
なお自治体によって申請手続きの手順が異なる場合がありますので、一般的な流れとして参考にしてください。
(1)相談
助成を受けるための申請手続きを行うには、教習所(自動車学校)に申し込みを行う前に相談が必要です。
お住まいの市区町村にある福祉窓口で、助成事業を行っているかを確認してください。
助成支援を行っている場合、免許取得の理由や教習所名・教習期間・費用などの聞き取りが行われます。
助成対象の該当となるか確認ができ次第、教習所へのお申込み手続きが可能です。
その時に申請手続きに必要なものを確認しておきましょう。
(2)申請
申請は助成対象となる障害者手帳のほか、印鑑や運転適性検査結果証明書、パンフレットなど教習所の必要経費がわかるものを持参して申請手続きを行います。
自治体によって必要な書類などが異なりますので、(1)の相談時に確認しておきましょう。
(3)決定
申請内容を確認した上で、福祉窓口から決定通知書が送付されます。
助成の決定を受けた後に教習所の入校や支払いなどを行う流れとなります。
(4)実績報告書等の提出
教習所の卒業検定や運転免許試験場での学科試験に合格し、運転免許証を取得したら福祉窓口に下記の書類を提出します。
- 実績報告書(福祉窓口で配布)
- 交付請求書(福祉窓口で配布)
- 経費支出証明書(自動車教習所が記入)
- 運転免許証(写し)
上記のほかに、領収書や振込先口座のわかる通帳、印鑑が必要な場合があります。
自治体によって申請手続きが異なれば提出書類も異なりますので、あらかじめ確認しておきましょう。
(5)助成の決定
市区町村の福祉窓口から交付決定額通知書が送付され、指定した金融機関に補助金が振り込まれます。
障害者自動車運転免許取得費助成の留意点
自動車運転免許取得費の助成を受ける際には、教習所へ入所・申し込む前に市区町村の窓口で相談・申請することが望ましいです。
教習所の教習費用は一般に前払いが多く、支払った後の申請では支払い能力があると判断される可能性があるためです。
なお自治体によっては、事後申請として教習所の技能試験合格証明や運転免許証の提出により助成するケースもあります。
その場合は運転免許証の交付を受けてから1年以内に申請が必要となるなど条件がありますので、助成を受けたい場合は事前に市区町村の窓口で確認しましょう。
教習所に通っていたのに途中で止めてしまったり、教習期間内に免許試験を受けられなかったり受からなかったりした場合には助成ができない場合もありますので注意してください。
障害者の運転免許取得費用助成・まとめ
障害者が運転免許を取得するのに、教習費用の負担を軽減できる助成支援があるのを知らなかった人も多いのではないでしょうか。
筆者も運転免許証を所有していますが、最近まで国や地方自治体による障害者自動車運転免許取得費助成事業があるのを知りませんでした。
2025年秋に50cc原付バイクの国内生産が終了したことに伴い、二輪車の免許を取得したほうがいいのか考えていたところへ教習所の費用を助成する制度を目にしました。
きっかけがなければ、障害者の自動車運転免許取得費を助成する福祉支援を知らないままの人も多いです。
運転免許の取得を検討している障害のある人は、障害者総合支援法に基づいて定められた助成制度を活用して教習費用の負担を軽減しましょう。
以下の記事では、難聴や聴覚障害のある人が運転免許の取得ができる条件や留意点について紹介していますので併せてお読みください。

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